2022/4/13
認知症の患者数の増加に伴い、認知症による行方不明者も増えている。警察庁の統計によると、認知症やその疑いで行方不明となり警察に届け出が出された数は、2016年の15,432人から年々増加しており、2020年には17,565人にのぼっている(警察庁:令和2年における行方不明者の状況)。これは、全行方不明者の届け出数の2割を超える人数にあたる。
大半は捜索によって早期に所在確認されるものの、不慮の事故などによって死亡につながることもあり、2020年には認知症による行方不明者中、527名の死亡が確認されている。また、所在が確認できない方のなかには、自分がどこの誰だかがわからなくなってしまったまま、施設等に保護されている例もあると考えられる。
今後も認知症患者の増加傾向は続くとみられるなかで、行方不明者の命を守るための対策が求められている。
東京都健康長寿医療センター研究所では、この度「認知症による行方不明-いのちを守るために必要なこと-」と題するパンフレットを作成し、認知症による行方不明の実態と、家族に参考となる対策についてまとめている。
まず、家族や介助者は、認知症による行方不明が必ずしも高度の認知症によって生じるわけではないことを意識する必要がある。軽度、あるいはまわりからみて認知機能の障害がないと思われている状態の方でも、行方不明になる場合があることがわかっている。また、徒歩に限らず公共交通機関を利用して遠方まで移動することもある。そして、同居家族が気をつけていても、少し目を離した隙に外出してしまうなど、完全に防ぐのが難しい場合もある。
このようなことを踏まえ、家族や介助者は行方不明がいつ起こりうるかわからないことを意識しておき、もし行方不明になってしまった際はすぐに捜索を始めることが大切だ。家族のなかには、恥ずかしい、他人に迷惑をかけたくない、などと考え、届け出をためらい自分たちだけで捜索しようとする場合もある。しかしながら、発見までの期間が短いほど、行方不明者が無事に発見される可能性は高く、発見が遅くなるにつれその可能性は低下していく。警察への届け出、役所を介した防災無線等での呼びかけ、地域包括支援センターやケアマネージャーへの連絡など、考えられるすべての手段を講じる必要がある。
看護・介護に携わっている方は、訪問先やデイサービス、通院時などに、ご家族から「徘徊に困っている」「すぐどこかへ行ってしまう」などの話を聞く機会も多いだろう。そのとき無事に発見できたとしても、次にまた無事とは限らない。認知症高齢者の命を守るため、上記の点を意識し、家族とも認識を共有しておくことが大切だ。
詳しくは、東京都健康長寿医療センター研究所Webサイト(「認知症による行方不明-いのちを守るために必要なこと-(令和4年3月)」)参照
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