2022/4/19
国立循環器病研究センターは2022年3月4日、都市部地域住民を対象とした吹田研究(1989年より同研究センターが実施しているコホート研究)を用いて、日常生活において階段の利用が多いと心房細動罹患リスクが低いことを明らかにしたと発表した(※1)。
身体活動量が多いと、循環器病やがんなどの罹患率や死亡率が低いことが近年の疫学研究において示される一方で、激しい運動は逆に健康障害をもたらす場合があることもわかってきている。アスリートは非アスリートに比べると、5.29倍心房細動になりやすいことを解析した研究もあり、適度な運動が重要となる。
同研究チームは、日常生活の中の簡便な身体活動の指標として、階段の利用率を想定し、階段の利用が多いと心房細動の予防につながるかどうかを検討した。
研究参加者の30~84歳の都市部一般住民のうち、ベースライン調査時に心房細動の既往歴のない6,575名(男性3,090名、女性3,485名)を対象に、心房細動の新規罹患を追跡したところ、平均14.7年の追跡期間中に295名が心房細動と新たに診断されたという。
そして、「3階まで昇るときに階段をどのくらいの割合で利用しますか」の質問において、2割未満、2~3割、4~5割、6~7割、8割以上の5択で回答してもらった。
本研究では、解析の結果、6割以上階段を利用する群において心房細動の罹患率が低いことを日本の地域住民を対象とした追跡研究で初めて示すことができたという。日ごろからどの程度階段を利用しているか、という簡単な指標で心房細動のリスクが予測でき、しかも運動習慣で調整しても有意であったところから、運動習慣とは別に、日頃から日常生活で階段を利用するように心がけていると心房細動になりにくいということがわかったという。
同研究グループでは、これまで「吹田心房細動スコア」という心房細動罹患の予測ツールを開発してきた。今回の結果を受けて、今後は生活習慣要因も加えていくことで心房細動の発症を予防するための食事や運動、睡眠なども含めた生活習慣改善が提示できるようになる可能性があるとの展望を示した。
研究の限界性として、自己記入式の問診票であるため、誤分類の可能性が否定できないこと、また、腰痛や膝関節症などの疾患の影響を検討していないことなどを挙げている。なお、階段を避ける傾向があると考えられる腰痛や膝関節症などの整形外科的な疾患を有する人には、椅子を使った体操など、別の方法を紹介していく必要があるとも述べている。
詳しくは、国立循環器病研究センターWebサイト(2022年3月4日<プレスリリース>「日頃の階段の利用が多いと心房細動罹患リスクが低い:都市部地域住民を対象とした吹田研究」)参照。
※1 本研究の成果は、2022年3月4日に日本衛生学会の英文誌Environmental Health and Preventive Medicineに掲載された。
論文タイトル:
Arafa A, KokuboY, Shimamoto K, et al: Stair climbing and incident atrial fibrillation: A prospective cohort study. Environmental Health and Preventive Medicine 2022; 27: XX.
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