2022/7/19
慶應義塾大学の研究グループは、新型コロナウイルス感染症(以下、COVID-19)の罹患後症状に関して、国内で初めて1,000例規模の症例を対象とする大規模実態調査を行い、2022年6月2日にその結果を報告した。この研究は、同大学医学部内科学教室(呼吸器)の福永興壱教授、内科学教室(消化器)の金井隆典教授をはじめとする「コロナ制圧タスクフォース」(※)での実績に基づき実施された。
調査は、全国27施設で、2020年1月から2021年2月末日までにCOVID-19 と確定診断され入院加療を受けた18歳以上の1,066症例を対象に行われた。COVID-19罹患後によく見られる全身症状や呼吸器症状、精神・神経症状などの24項目の症状(罹患後症状)の有無を、入院中、診断3か月後、6か月後、12か月後に、回答用紙あるいはスマートフォンアプリを用いてアンケート調査を実施した。また、国際的に使用されている質問票(評価尺度)を用いて、健康に関連したQOLへの影響、不安や抑うつの傾向、新型コロナウイルスに対する恐怖感、睡眠障害、労働生産性に関しても調査が行われた。なお、有症状の発症比率だけでなく、各種質問票を使用し多面的で定量性が高く、比較解析が容易な方法で実施された点においても国内初の試みとなる。
調査の結果、何かしら1つ以上の罹患後症状を認めた割合は、診断3か月後には46.3%、診断6か月後には40.5%、診断12か月後には33.0%であった。時間の経過とともに症状を認める割合は低下するものの、診断12か月後も約1/3の患者で罹患後症状が遷延していることがわかった。
罹患後症状の割合では、診断3か月後に多い症状は上位から「疲労感・倦怠感」(20.5%)、「呼吸困難」(13.7%)、「筋力低下」(11.9%)。診断6か月後では「倦怠感」(16.0%)、「思考力・集中力低下」(1.2%)、「呼吸困難」(10.3%)。診断12か月後では「倦怠感」(12.8%)、「呼吸困難」(8.6%)、「思考力・集中力低下」(7.5%)、「筋力低下」(7.5%)であった。
また、診断3か月後の時点で罹患後症状が1つでも存在すると、健康に関連したQOLの低下、不安や抑うつ傾向の増加、COVID-19に対する恐怖感の増長、睡眠障害の増悪、労働生産性の低下などの影響があることが示された。
同調査では、この他にも罹患後症状の世代別による検討や男女別による検討などが行われ、結果が発表されている。
同研究グループでは、引き続き集計したデータに基づき詳細な解説を進めることで、わが国におけるCOVID-19罹患後症状の実態を明らかにし、その罹患後症状に対する医学的アプローチだけでなく、政策にも寄与したいとしている。
罹患後症状については、まだ明らかになっていないことが多いとされているが、今回の実態調査により有症状の割合や経過、影響の把握が可能となった。また、厚生労働省からは2021年12月に公表された「新型コロナウイルス感染症 診療の手引き」の別冊「罹患後症状のマネジメント【暫定版】」が改定され、2022年4月に第1版が公表されている。こうした資料とともに、今後も積み重ねられる情報や知見とあわせて、症状に苦しむ患者さんへのアプローチやフォローアップへの活用を期待したい。
詳しくは、下記の各Webサイト参照
慶應義塾大学
「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の罹患後症状に関する国内最大規模調査報告について」
https://www.keio.ac.jp/ja/press-releases/2022/6/2/28-124476/
厚生労働省
「新型コロナウイルス感染症(COVID-19):診療の手引き 【別冊】罹患後症状のマネジメント 第1版」(2022年4月作成公表)
https://www.mhlw.go.jp/content/000935259.pdf
※コロナ制圧タスクフォース
新型コロナウイルスから社会を守る時限的な緊急プロジェクトとして立ち上がり、慶應義塾大学、東京医科歯科大学、京都大学、大阪大学、東京大学医科学研究所をはじめ多施設のさまざまな研究分野から科学者が横断的に結集したチーム。
(プレスリリースより引用)
コロナ制圧タスクフォースWebサイト
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