2022/9/14
弾性ストッキングは下肢に段階的に圧がかかるような構造になっており、筋肉のポンプ作用を促進することで静脈還流の改善や深部静脈血栓症予防のために用いられる。適切なサイズや装着手順を守らないと血行障害や神経障害を引き起こす恐れがあり、患者状態によっては使用禁忌、あるいは慎重な適用が求められる。
公益財団法人日本医療機能評価機構によると、下肢閉塞性動脈硬化症(ASO)を有する患者に弾性ストッキングを着用させた事例が7件報告されている(2018年1月1日~2022年5月31日集計)。そのうち6件は、着用後に、下肢の疼痛や発赤確認、皮膚が暗赤色となるなどの虚血症状がみられた。
ASO患者への弾性ストッキング着用に至った主な背景としては、以下のようなものが挙げられている。
患者のASOの把握不足 | ●医師・看護師は診療録を確認しておらず、患者がASOであることを把握していなかった |
知識不足 | ●医師・看護師は、ASOの患者が弾性ストッキングを着用することのリスクを知らなかった ●看護師は、ASOの患者に弾性ストッキングの着用が禁忌であるという知識がなかった |
着用の可否の未検討 | ●医師・看護師は、弾性ストッキングの着用の可否を検討していなかった ●看護師は、術前は弾性ストッキングを着用させると思っていた |
*弾性ストッキングの種類により、添付文書の【警告】や【禁忌・禁止】の記載内容が異なることがある
動脈血行障害がある患者が弾性ストッキングを着用した場合、圧迫によって狭窄部の血流が遮断され、血行障害が悪化する恐れがある。
医師・看護師は、着用前に患者にASOの既往がないかを確認するとともに、使用する弾性ストッキングの添付文書を確認し、着用可否を慎重に検討する必要がある。そのうえで、着用が必要な場合は、携わるスタッフ間で情報を共有し、血行障害が悪化していないかを常に確認すること、異常が疑われた場合はただちに使用を中止することが重要だ。
詳しくは、下記の日本医療機能評価機構Webサイト参照
医療安全情報No.188(2022年7月) 下肢閉塞性動脈硬化症の患者の弾性ストッキングの着用
https://www.med-safe.jp/pdf/med-safe_188.pdf
【関連ページ】
●糖尿病性足病変に対する治療・フットケア
×close
©DEARCARE Co., Ltd.