2022/10/5
東京都健康長寿医療センター研究所は、同研究所の村山洋史氏らの研究チームの調査によって、「コロナ禍の介護負担感の増加により、家族介護者のメンタルヘルス不調のリスクは1.9倍高くなる」ことを発表した(2022年8月25日付)。
新型コロナウイルス感染症(以下、コロナ)流行の影響を受け、メンタルヘルスの不調が世界中で問題となっており、特に介護サービスの利用が制限されるなど、介護者の負担が大きく、メンタルヘルスの問題が深刻化している。
こうした現状のもと、同研究チームは家族等の介護をしている者(以下、家族介護者)1,920名を対象に、コロナ禍の介護負担変化の実態把握と、介護負担増加とメンタルヘルス不調の関連を調査した。
調査の結果、半数以上(56.7%)の家族介護者が介護負担の増加を報告したとのこと。これは「新型コロナウイルス流行前(2020年1月以前)と比べ、自分にとっての介護の負担が増えたと思いますか」という質問に対して、「たまに思う」「時々思う」「よく思う」「いつも思う」と回答した者の数にもとづく。
また、人口学的変数、社会経済的変数、健康関連変数、介護者・被介護者関連変数の影響を統計学的に取り除いても、コロナ禍で介護負担が増加した者は、そうでない者と比べて、メンタルヘルス不調となるリスクが1.9倍高い結果であったという。
さらに、この関連を、回答者の属性によって異なるかどうかを検討したところ、被介護者の介護度が「認定なし」「要支援1・2」「要介護度1・2」と介護度が上がるほどリスクが高くなったが(要介護度1・2では3.8倍)、「要介護度3~5」では介護負担増加とメンタルヘルスの関連は見られなかった。
このことから、同研究チームでは、「要介護度1・2」の者の利用が多い通所サービス等がコロナ禍でさまざまな制限を受け、コロナ前と介護の状況が変化し、その介護状況の変化が、家族介護者の介護負担増加とメンタルヘルスの関連に悪影響を及ぼしたとの考察を示した。
今回の成果について、同研究チームは「既存の制度やサービスだけでは、コロナによる介護負担増加およびメンタルヘルス不調を防ぐには不十分であった可能性がある」とし、「長引くコロナ禍において、家族介護者の介護負担軽減とメンタルヘルス不調者への対策を早急に講じる必要性がある」と訴えた。
詳しくは、東京都健康長寿医療センターWebサイト(2022年8月25日<プレリリース>「コロナ禍の介護負担感の増加により、家族介護者のメンタルヘルス不調のリスクは1.9倍高くなる」)参照
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