2022/11/22
順天堂大学大学院医学研究科代謝内分泌内科学の加賀英義助教らの研究グループは、文京区在住の高齢者を対象にした調査で、2型糖尿病のみならず、男性では糖尿病予備群といわれる前糖尿病の段階から、サルコペニアのリスクが高いことを明らかにした(2022年9月6日付)。
これまでの研究で、糖尿病の高齢者は糖尿病のない高齢者に比べて、サルコペニアのリスクが2倍程度高いことがわかっている。その一方で、高齢化に伴い増加傾向にある前糖尿病状態(糖尿病予備群、境界型糖尿病とも呼ばれる)の人も、糖尿病患者と同様に、脳卒中や心筋梗塞といった心血管のリスクが高いことが明らかにされている。そのため、近年では前糖尿病状態の段階から動脈硬化症の予防が積極的に行われるようになっているという。ところが、前糖尿病状態がサルコペニアのリスクとなっているかどうかはこれまでよくわかっていなかった。
そこで同研究チームは、東京都文京区在住の高齢者を対象としたコホート研究“Bunkyo Health Study”(文京ヘルススタディー)を用い、前糖尿病とサルコペニアの関連について調査を実施した。調査対象は、文京ヘルススタディーに参加した65~84歳の1,629名(男性687名、女性942名)で、身長・体重・体組成測定、握力・膝伸展、屈曲筋力などの筋力測定、歩行速度や開眼片脚立ち検査などの身体機能検査、75g経口糖負荷検査による耐糖能評価が行われた。
同研究では、正常耐糖能群、前糖尿病群、2型糖尿病群の3群に分類し、サルコペニアの有病率が比較された。その結果、男性では、耐糖能が悪化するにしたがって、サルコペニアの有病率が上昇する一方、女性では2型糖尿病群でのみ、サルコペニアの有病率が増加していることが明らかになったという。
さらに、年齢、BMI、体脂肪率、身体活動量、エネルギー摂取量、脳血管疾患の既往の有無で調整した結果、2型糖尿病群では正常耐糖能群と比べて、サルコペニアのリスク(オッズ比:ある疾患などへの影響度を示した尺度。オッズ比が1より大きいと影響度が大きいことを示す)が男性で約2.6倍、女性で約2.1倍有意に高まること、また、男性でのみ前糖尿病群で、正常耐糖能群と比べて、約2.1倍有意に高まることが示されたという。加えて、男性、女性において、加齢や低いBMI、高い体脂肪率はサルコペニアの独立したリスクとなっていることも明らかにされた。
これらのことから、同研究グループは「糖尿病患者だけでなく、前糖尿病状態の男性でもサルコペニアの有病率が上がる」と結論づけ、「運動や食事などの生活習慣の改善に早期から取り組むことが、糖尿病の予防のみならずサルコペニアの予防の観点からも重要である」としている。また、本研究を継続することで「サルコペニアのみならず、介護原因疾患のリスクや早期スクリーニング方法、さらには介入方法まで確立することを目指す」と展望を述べた。
詳しくは、下記の順天堂大学Webサイト参照
「高齢男性では糖尿病予備群の段階からサルコペニアのリスクが増大」
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