2022/12/14
名古屋市立大学、愛知県がんセンター、京都大学などの研究チームが、2022年11月3日、スマートフォンのアプリを用いて、乳がん患者の再発に対する恐怖を軽減することができたと発表した。
国内では毎年9万人以上が乳がんと診断されている。がん医療の進歩により治癒率は改善されているものの、多くの患者が再発に対する不安感や恐怖感を経験しており、実際に、6割を超える乳がん患者が、再発に対する恐怖を軽減する治療を希望しているという(※1)。治療方法としては認知行動療法が期待されているが、現状、こうした恐怖がケアや治療の対象とはなりにくく、専門的な治療を提供できる医療者の不足、仕事や子育てといった患者自身の負担の問題もあり、ほとんどの患者は適切な治療を受けられていない。
そこで、同研究チームは、患者自身で認知行動療法を実施できるアプリを開発し、その有効性を確認するため今回の研究を行った。研究には、乳がんの手術を受けて1年以上再発のない、50歳未満の女性447人が参加した。彼女らを、通常の治療に加えて、認知行動療法のアプリと問題解決療法の2つのアプリを使用するグループと、使用しないグループに無作為に分けて、8週後の状態が比較された。
その結果、アプリを使用したグループは、開始から4週後で再発に対する恐怖が軽減し、8週後もそのまま効果がみられた。さらに、24週後も8週後の状態と差がみられなかったことから、その効果が継続している可能性が示された。副次評価として抑うつや心理的ニード(心理的側面に関するケアの必要性)も有意に改善し、効果の継続が認められたとし、副作用の報告もなかったと報告されている。
同研究チームは、多くのがん患者が仕事をしながら通院したり、さまざまな心理的苦痛を抱えながら生活しているなか、今回の研究は、スマートフォンのアプリを使うことで通院等の負担を大きく軽減でき、また場所や時間を選ばず苦痛を和らげるための医療を受けることができる可能性を示す、と述べている。
詳しくは、下記の公立大学法人名古屋市立大学Webサイト参照
■乳がん患者さんの再発に対する恐怖をスマートフォンアプリを⽤いて軽減することに世界ではじめて成功
https://www.nagoya-cu.ac.jp/press-news/11030500/
※1 Tatsuo Akechi T, Okuyama T, Endo C, et al.: Patient’s perceived need and psychological distress and/or quality of life in ambulatory breast cancer patients in Japan. Psychooncology 2011; 20(5): 497-505.
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