2023/1/6
神戸大学大学院の永井洋士客員教授らの研究チームは、70歳代の神戸市民、約8万人を対象にした質問票(基本チェックリスト)を用いて、認知機能に関連する3つの質問により、要介護認定になるリスクを推定できることを明らかにしたと発表した。
神戸市では介護予防・日常生活支援総合事業の一環として、日常生活の自立度に関する25項目の質問票「基本チェックリスト」を活用している。この基本チェックリストと要介護認定のデータを統合し調査した先行研究において、質問に好ましくない回答をした数が多いほど、要介護認定のリスクが高いことが推定されている。
本研究はこの調査を前向きに実証する研究として、2015年に、要介護認定を受けていない神戸市在住の70歳以上の高齢者7万7877人を対象に、神戸市が郵送した基本チェックリストを用いて行われた。このチェックリストの質問への回答結果と、2015年から2019年にかけて収集された要介護認定データを突合し、関連を調査した。
基本チェックリストへの回答率は64.4%であった。回答した人と回答しなかった人とで、基本チェックリスト調査から4年後の要介護認定の累積発生率を比較したところ、回答しなかった人のほうが回答した人よりも要介護認定のリスクが高くなっていることがわかった(12.5%対8.4%)。
さらに、回答結果と要介護認定リスクとの関係についても詳しく調べている。なかでも着目したのが、認知機能に関連した3項目の質問の回答結果である。
要介護認定の発生率は、上記の3つの質問に対して好ましくない回答が多いほど高くなることがわかった(好ましくない回答の数が0、1、2、3の回答者は、それぞれ4年後の時点で5.0%、8.4%、15.7%、30.2%)。同様に、認知機能低下を伴う要介護認定に限定した場合でも、好ましくない回答が多いほど、要介護認定の発生率は上昇した(好ましくない回答の数が0、1、2、3の回答者は、3.4%、6.5%、13.7%、27.9%)。
これらの結果から、基本チェックリストに回答をしなかった人は、それだけで要介護認定になるリスクが高いと推定できること、また、認知機能に関する簡単な質問への回答結果から、要介護認定のリスクが推定できることがわかった。同研究グループは、これらの観測は、リスクが高いと推定される市民に的を絞った対策を行い、認知症の社会負担を減らす糸口を見いだす可能性を示すものであるとしている。
詳しくは、下記の神戸大学Webサイト参照
「認知機能に関連した簡単な質問により、要介護リスクを推定できる:神戸市基本チェックリスト解析結果」
https://www.kobe-u.ac.jp/research_at_kobe/NEWS/collaborations/2022_12_01_02.html
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