2023/1/10
東京慈恵会医科大学は、日本医療福祉生活協同組合連合会 家庭医療学開発センター Practice-based research networkと共同で、在宅療養患者の追跡調査を行い、在宅療養を開始してから在宅で亡くなる累積発生率を経時的に調べ、在宅死に、在宅以外で死亡する場合と比べて、どのような要因がかかわるかを明らかにしたと発表した(2022年11月15日付)。この報告は、日本で医師主導の在宅医療訪問を受けている患者の在宅死亡の累積発生率を訪問診療開始時から評価し、生物心理社会的観点から患者の詳細な情報を分析した初の研究になるとのこと。
本研究の調査対象者は、2013年2月1日から2016年1月31日までの間に、東京大都市圏に位置する13施設から、在宅で医師主導の定期的な医療を受け始めた65歳以上の762人。2017年1月31 日まで観察を行い、12の調査項目(生物心理社会的変数)を用いて在宅死にかかわる因子が検討された。12項目については以下のとおり。
【生物医学的項目】①性別、②年齢、③がんの有無、④栄養状態(血清アルブミン値)、⑤基本的日常生活動作(Barthel Index score)、⑥褥瘡治療の有無、⑦在宅酸素療法/呼吸器使用
【心理的事項】⑧認知症の有無、⑨うつ傾向(Cornell Scale for Depression in Dementia の日本語改訂版)
【社会関連変数】⑩常勤介護者の有無、⑪一人暮らしかどうか、⑫生活保護受給者かどうか
追跡期間中に死亡したのは368人で、そのうち133人(36.1%)が在宅で死亡した。在宅療養開始直後は在宅死が他の場所での死亡よりも多くなっていたが、その後、在宅死の累積発生率は緩やかに増加した。一方、他の場所、主に病院での死亡は、追跡期間終了まで比較的一定に増加する傾向にあった。したがって、在宅ケアの期間が長ければ長いほど、自宅での死亡の割合が低下していたことになる。
また、12の調査項目のうち以下の4項目が、在宅死亡との関連性が高い因子であることが明らかになったという。
研究チームでは、これらの在宅死に関連する一連の因子は、患者とその家族の将来の死に対する準備状況と関連していることを示唆した。また、今後さらにこの研究データを用いて解析を行い、在宅療養高齢患者の実態を明らかにする予定としている。
詳しくは、慈恵大学Webサイト「在宅療養高齢患者さんの在宅死の累積発生率と要因を多施設共同の追跡調査で明らかに!」参照
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