2023/2/16
高齢化が進むのに伴い、高齢のがん患者も増加の一途を辿っている。がんの診療(治療)にあたっては、臓器ごとあるいはがん種ごとに標準的な診療(治療)が、ガイドラインで示されている。しかし、高齢のがん患者では、以下のような高齢者ならではの脆弱性や課題、特徴がよくみられることから、現状のガイドラインでは必ずしも対応しきれていないという側面があった。
これらは患者によって個人差も極めて大きく、高齢がん患者への具体的な治療前評価や推奨される治療強度に関する指針が確立していないこともあり、最終的には担当医の主観的な評価をもとに治療方針が決定されることも多い。
このような背景のもと、高齢がん患者がおかれている臨床的諸問題を正しく理解し、適切な介入を行うことなどによって、生存期間や健康寿命、生活の質といったアウトカムを改善することを目的に、厚生労働省科学研究 がん対策推進総合研究事業の一環として、「高齢者がん診療ガイドライン2022年版」が公開された。本ガイドラインは、2020年に日本がんサポーティブケア学会から公表された「高齢者がん医療Q&A」の発展形として、臓器横断的、がん種横断的な診療指針を目指し作成が進められた。
本ガイドラインでは、総論として、フレイルや高齢者の身体的・精神的変化、意思決定能力、介護・福祉(介護保険制度)など、高齢者の治療・ケアに携わるうえで特に知っておきたい点が、がん患者への視点からまとめられている。さらに、高齢の方へのがん治療によって期待される効果と不利益や、高齢がん患者を取り巻く社会問題についても解説されている。
また、本ガイドラインの後半では、高齢者機能評価;GA(Geriatric Assessment)/CGA(Comprehensive Geriatric Assessment)、リハビリテーション治療、栄養療法およびサルコペニア対策について、計5つのCQ(クリニカルクエスチョン)に対して推奨を提示している。
看護師・介護士が接する高齢者のなかには、がんと診断されたばかりの方やがん治療中の方、経過観察中や寛解された方など、がんと何らかのかかわりがある場合も多いだろう。本ガイドラインは、CQの推奨提示だけにとどまらず、共有意思決定(Shared decision making:SDM)のツールとしての役割も担うものである。ぜひ本ガイドラインを参考に理解を深めることで、一歩進んだ患者支援につなげたい。
本ガイドラインは、下記、「高齢者がん診療ガイドライン策定とその普及のための研究」研究班のホームページで全文を閲覧することができるため、ぜひ参照してほしい。
詳しくは、下記の厚生労働省科学研究 がん対策推進総合研究事業「高齢者がん診療ガイドライン策定とその普及のための研究」佐伯班ホームページ参照
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