2023/5/10
京都大学大学院医学研究科助教の井上浩輔氏(社会疫学)とカリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)准教授の津川友介氏(医療政策学)らの研究グループは、米国国民健康栄養調査(NHANES)のデータを用いて、1日に8,000歩以上歩いた日数ごとの死亡リスクを検討した。その結果、週に1~2日程度でも8,000歩の歩数を達成することで死亡リスクが減少し、健康によい影響が得られることが明らかになったと発表した(2023年3月30日付)。
これまでの研究で平均的に8,000歩/日以上歩く人は死亡率が低くなることが示されていたが、週に数日だけ歩く場合の健康への影響についてはわかっていなかった。そこで、同研究グループはNHANESのデータから、20歳以上の参加者3,101人(平均年齢:50.5歳、女性:51%)を対象に解析を行い、1週間の間に8,000歩以上歩く日数と死亡率との関連性について検討した。
その結果、1週間に8,000歩以上歩く日数が多い人ほど、全死亡と心血管疾患の死亡リスクが低いことが明らかになった。それだけでなく、週に1~2日しか8,000歩以上歩けなかった人でも、全死亡や心血管疾患の死亡リスクが大幅に低く、週3日以上目標歩数を歩く人と同様に健康的であることが認められた。また、1日の歩数目標を6,000歩から10,000歩まで変化させても同じ結果が得られたという。こうしたことから定期的に運動するのが難しい場合、1週間に数日だけでも8,000歩以上歩くことが健康にとって有意義な影響をもたらすことが示唆された。
同研究グループでは、仕事や持病、家族の都合で目標歩数を達成できない状況でも、「週に数日間だけ歩く習慣を取り入れることで健康リスクを低減できる可能性があり、現代社会の働く世代や高齢者にとって重要なエビデンスになることが期待される」としている。
厚生労働省が令和元年にとりまとめた「国民健康・栄養調査報告」(※1)によると、1日あたりの平均歩数は男性で6,793歩、女性で5,832歩である。年齢別に見ると20~64歳の歩数は、男性7,864歩、女性6,685歩、65 歳以上では男性5,396歩、女性4,656歩と、年齢が上がるにつれて減少傾向にある。
運動時間の確保が難しい人や高齢者にとっては、この研究結果が歩行指針の1つとして役立つのではないかと思われる。
詳しくは、下記の京都大学Webサイト参照
「1週間の歩行パターンと死亡リスクの関連を明らかに-週2回しっかり歩くことで健康は維持できるか?-」
https://www.kyoto-u.ac.jp/ja/research-news/2023-03-30
参考資料
※1: 厚生労働省:令和元年国民健康・栄養調査結果の概要.
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