2023/7/6
浜松医科大学と信州大学の研究グループは、リハビリテーションに対する患者の意欲を高める動機づけ要因についてアンケート調査を行い、「回復の実感」、「明確な目標の設定」、「患者の生活に関する訓練」が、患者・医療者ともに要因トップ3として挙げられたことを報告した。
脳卒中や外科手術後など、急性期が過ぎた後に生活に戻っていくうえで欠かせないのがリハビリテーションである。リハビリテーションの進捗には患者の意欲が大きくかかわるため、意欲を高めるための動機づけが大切だ。
同研究グループは、この動機づけ要因について、患者と医療者の双方にアンケート調査を行った。回復期リハビリテーション病棟を有する13の施設において、患者(該当施設に入院中で、脳卒中・神経疾患・整形疾患を有する)479名と、医療者(医師、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士)401名が参加し、15個の動機づけ要因のリストのなかから、リハビリテーションに対する患者の意欲を高めるために最も重要な要因を選択する形で調査が行われた。
調査の結果、最も多くの対象者に選択された動機づけ要因トップ3は、患者と医療者で共通しており、①回復の実感、②明確な目標設定、③患者の生活に関する訓練、の順となった。これらは、これまでも患者の動機づけにおいて大切と考えられていた要因でもあり、今回の調査結果で改めて、患者・医療者双方から見て重要であることが定量的に示された。
さらに、対象者の5%以上が選択した要因の数は、患者群は9つであるのに対し、医療者群は5つとなっており、何がリハビリテーションに対する意欲を高めるかは、医療者よりも患者間の個人差が大きいことがわかった。
また、探索的分析の結果、「回復の実感」と「明確な目標設定」は、65歳未満の患者に重要な要因として選ばれていたことや、入院してから日が浅い時期の患者ほど「医学的情報」が動機づけ要因として重要と考えていることもわかった。このように、患者背景の違いによって、重要と考える動機づけ要因が異なることが明らかとなった。
これらの結果から、リハビリテーションにおける動機づけ方略を考える際、医療者は、患者・医療者双方から支持される中核的な動機づけ要因に加えて、患者背景や個々の患者の好みも考慮すべきであることが示唆された。本研究成果は、患者の動機づけに難しさを感じているリハビリテーション医療従事者、特に臨床経験年数の浅い医療者にとって有益な情報になると考えられる、と、同研究グループは結んでいる。
患者自身がどのように回復を実感しているか、どんな目標があるのか、生活していくうえでどのような動作が大切かなど、これら動機づけ要因に関する情報は、看護師が日々患者・家族と接するなかで得ることも多いのではないだろうか。これらの情報は積極的にリハビリテーション関連職と共有し、患者のリハビリテーション意欲の向上につなげたい。
詳しくは、下記の浜松医科大学研究成果プレスリリース参照
「何がリハビリテーションに対する患者の意欲を高めるのか? ~患者・医療者間の意見の一致と相違~」
https://www.hama-med.ac.jp/mt_files/751d154658b5dc432de59cd98fa9d33b.pdf
【関連ページ】
●「ディアケア プレミアム」
生活動作の介助技術:リハビリテーションの視点から(実践ケア動画)
https://dearcare.almediaweb.jp/home/cat01/theme011/index.html
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