2023/12/5
認知症発症にかかわる要因として、近年注目を集める “心理的ウェルビーイング”。これまで心理的ウェルビーイングが循環器疾患などの慢性期疾患と関連することは報告されてきたが、認知症との関連についての研究はまだ少ない。
順天堂大学大学院医学研究科公衆衛生学の野田愛准教授、谷川武 主任教授らの共同研究グループ(多目的コホート研究:JPHC Study)は、生活が楽しいと感じるポジティブな意識とその後の認知症リスクとの関連を調査。生活を楽しんでいる意識が高いと、要介護認知症(以下、認知症)のリスクが低いことを明らかにした。
調査対象は、1990年に秋田県横手、長野県佐久、茨城県水戸、高知県中央東、沖縄県中部の5保健所(呼称2019年現在)に在住の約3万9000名。2006~2016年までの認知症調査期間中に4,642人が認知症と診断されていることを確認。なお、認知症の診断は介護保険認定情報から把握された。
解析の結果、生活を楽しんでいる意識が低い人に対し、中程度の人では認知症リスクが25%、高い人では32%と、有意に低いことが明らかになった。
同コホート研究で、脳卒中の発症登録が行われた2009年または2012年までに認知症と診断された人は2,158人。そのうち、脳卒中の既往がなかったのは1,533人、脳卒中の既往があったのは625人だった。脳卒中の既往の有無にかかわらず、生活を楽しんでいる意識が低い人に比べると、中程度(「ふつう」と回答)と高い人(「はい」と回答)では、認知症リスクが有意に低いという結果であった。
さらに、同研究グループでは自覚的ストレスが認知症に与える影響についても調査。その結果、自覚的ストレスが「少ない」および「ふつう」のグループでは、脳卒中の既往の有無にかかわらず、生活を楽しんでいる意識が低い人に対し、中程度と高い人では認知症リスクが有意に低いことがわかった。
一方、自覚的ストレスが「多い」グループでは、生活を楽しんでいる意識と認知症リスクとの間に有意な差はみられず、脳卒中の既往がない認知症との関連もみられなかったという。
同研究グループによると、今回の研究結果は自覚的ストレスをコントロールしながら生活を楽しんでいる意識をもつことで、将来の認知症発症の予防に重要であることを強調するものであると述べる。また、認知症予防のための具体的な行動を特定することが難しいため、この後さらなる研究が必要としている。
詳しくは、下記の順天堂大学Webサイト参照
「生活を楽しんでいる意識」が要介護認知症リスクを抑制する」
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