2024/4/9
国立長寿医療研究センターは、薬剤師による処方見直しのための薬学的なアセスメントと多職種間の情報共有の不足を解消するために、「多職種連携推進のための在宅患者訪問薬剤管理指導ガイド」を開発・公開した。多職種からなるメンバーが共同作成し、薬剤師からの一方的な情報提供ではなく、多職種と双方向に情報共有できる体制をめざした内容となっている。
本記事では特に看護師・介護職と薬剤師との連携を中心に抜粋して紹介する。
【処方の確認】
在宅医療を始める際、医師や薬剤師は診療情報提供書やおくすり手帳などから情報を収集する。服薬介助や生活支援に直接携わる看護職や介護職は、これらの情報元には含まれないOTC医薬品やサプリメントなどの服薬状況を把握できているようであれば、薬剤師と共有されたい。
退院直後の患者の場合、高齢者の生活機能や支援体制によっては、入院中と同じ薬物を管理することが困難になることも多い。また、退院後に活動量や食事量など生活状況が変化し、処方見直しが必要になる場合もある。看護職や介護職が、退院後の患者の生活状況を主治医や薬剤師と共有することで、療養環境に合わせた処方見直しや服薬支援方法を検討できる。
【患者の機能評価】
服薬アドヒアランスは、看護職・介護職と薬剤師と共同で、患者の生活状況や服薬状況に関する情報を共有し、評価することが望ましい。特に、服用管理能力や嚥下機能障害、うつ状態、主観的健康感の低さ、医療リテラシーの低さ、居宅環境についての情報など、看護職・介護職がよく把握している情報は共有に努めたい。
【処方の見直し—患者に合わせた処方の工夫】
一包化や粉砕など、患者がのみやすく服薬アドヒアランスを保てる処方の工夫に向けて、患者の生活スタイルや服薬状況を看護職・介護職が薬剤師に伝え、問題がある場合は代替案を薬剤師から提案するなど、補完的な協同を行うことが望ましい。
残薬については薬剤師がいきなり介入するよりも、残薬数や保管状況、残薬の使用状況などを看護職・介護職と薬剤師とで情報共有し、なぜ残薬が発生しているのかや、患者のこだわりなどを事前によく確認したうえで介入するのが望ましい。
【処方の見直し—減薬・変更】
薬剤起因性老年症候群のように発現がわかりにくい症状は、看護職・介護職がケア中に感じる日常の些細な変化に関する情報が参考になる。また、薬物の変更時は、変更に伴う増悪や効果過剰などが生じていないか、訪問頻度の多い看護職・介護職と情報共有し、慎重な観察を行うとよい。
人生の最終段階にある者など、状況に応じて本人の価値観に基づく処方見直しが必要になることがある。本人の意思表明が難しい場合、意思決定支援者として看護職・介護職をはじめとした医療・ケアチームで治療方針を検討していくとよい。
【連携手段】
異なる職種の同時訪問や、電話、FAX、ICTを活用して情報共有に努める。また、サービス担当者会議や施設内で開催される地域ケア会議に参加し、情報共有を行うとよい。
本ガイドの内容は、在宅医療や介護施設で働く薬剤師はもちろん、看護師をはじめとした同じ現場で働く関連職種が患者の服薬状況や症状を把握するために役立つほか、服薬支援の点からも参考になる。
また、ガイド本体に加え、「在宅医療で遭遇しやすい薬剤起因性老年症候群の原因薬の一覧」も取りまとめられており、認知機能低下、めまい・転倒、錐体外路症状、食欲不振、嚥下機能低下、口腔乾燥、排尿障害、便秘、睡眠障害、以上9つの起因となりうる薬剤一覧が詳しくまとまっている。
多職種連携、アセスメントのために、ぜひお役立ていただきたい。
詳しくは下記の国立長寿医療研究センターのWebサイトを参照。
・薬剤師向け「多職種連携推進のための在宅患者訪問薬剤管理指導ガイド」の公開—薬学的管理の質向上と多職種連携の強化を目指して(2024年2月29日)
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