2024/5/7
国立長寿医療研究センターは2024年4月2日、東北大学、国立保健医療科学院との共同研究により、簡易に実施可能な介護者状況を評価する質問票を開発したと発表した。
介護は、介助者に対し、負担感に代表されるようなネガティブな影響だけでなく、自己肯定感や自尊心の向上といったポジティブな影響ももたらすことが知られている。こうした介護によるさまざまな影響を見逃すことなく、必要な場合は適切な支援につなげられることが介護者支援の推進において求められている。
2009年に日本語版が開発されたCaregiver Reaction Assessment(以下、CRA-J)は、「日常生活への影響」、「ケアに関する受け止め」、「家族のサポート」、「健康状態への影響」、「経済的な影響」の5要素から構成される質問票である。介護による経済的負担やポジティブな影響も含めた多様な側面について介護者の状況を評価することが可能だ。しかし、CRA-Jは全質問項目が18項目とやや多く、回答負担が大きく、実際の介護現場や行政施策において使用しにくい問題が指摘されていた。
そこで本研究では、65歳以上の家族介護者934人分のデータを用いて、簡易に実施できるCRA-Jの短縮版の開発が行われた。
完成した短縮版は「CRA-J-10」といい、CRA-Jの5要素から代表する2項目をそれぞれ選択し、全10項目の質問で構成されている。点数は10~50点満点で、点数が高いほど介護負担が重いことを示す。同研究グループによると、CRA-J-10は介護状況をよく反映することがわかっただけでなく、他の指標とも中程度以上の相関関係が確認できたことから、この質問票による評価の適切さが示されたと述べる。
また、実際の現場で使いやすいように、CRA-J-10の合計点数による介護負担の重度分類も行われた。分類は「介護負担なし」(10~20点)、「軽度」(21~30点)、「中程度」(31~40点)、「重度」(41~50点)の4段階。重度になるほど抑うつ有病率の増加が確認されており、簡便なハイリスク介護者の判定基準が提案された。特に、中程度以上では抑うつを持つ者が急激に上昇したという。
本研究により、介護現場や行政施策における簡易な介護者の評価が可能となり、介護者支援の推進を通じた在宅介護環境の整備につながることが期待される。
詳しくは国立長寿医療研究センターのWebサイト「簡易に実施可能な介護状況評価の質問票を開発 -家族介護者支援を推進-」を参照のこと。
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