2024/8/6
日本透析医学会によると、わが国の透析患者の総数は実に30万人を超えており、毎年3万人を超える人が透析療法を始めている。高齢者に限っていえば、100人に1人が透析治療を行っているとされており、透析を続ける方のなかには、フレイルや寝たきりとなって通院や日常生活が制限されている患者も多い。わが国では、透析期間が30年を超える超長期透析患者が増加傾向にあり、世界でも例を見ない状況だ。
新潟大学、福島県立医科大学、九州医療科学大学、日本大学からなる研究グループは、超長期透析患者の特徴を明らかにし、透析期間とフレイル・寝たきりとの関連を調査し、血液透析患者の透析期間が長期化すると、フレイル・寝たきりの頻度が高くなることを発見したと発表した。
調査にあたっては、日本透析医学会統計調査データベースの2018年のデーが用いられた。50歳以上の透析患者は227,136名で、そのうち透析歴30年以上の症例は5,510名(2.4%)であった。
横断的な解析の結果、透析歴30年以上の症例では、他の透析期間の症例と比較して、以下のような特徴が挙げられた。
・男性の割合が小さい
・糖尿病の合併が少ない
・認知症が少ない
・栄養指標が悪い
・大腿骨骨折と手根管症候群の手術既往が多い
そして、年齢の影響とは別に、透析期間が長い患者は、短い患者と比較して、フレイルあるいは寝たきりの有病率が増加することが明らかになり、透析期間の長期化と、透析患者の身体機能低下との関連が示された。これらは、骨折や脳梗塞など、フレイルや寝たきりの原因となるような背景因子で調整した結果であり、現在の透析療法では対応できていない、未発見の課題がある可能性が考えられる。
同研究グループは、今後の展開として、どのような背景因子が長期透析患者のフレイル・寝たきりの発症に関連するかということを明らかにする縦断研究が必要であると述べたうえで、将来、透析療法を長期間継続しても、慢性腎臓病患者の身体機能が保たれる医療が提供されることにつながるため、透析療法の問題点の解明と解決をめざしたさらなる研究が期待される、と結んでいる。
血液透析は、平均的に週に約3回、毎回4~5時間かけて行われる治療であり、この間、患者は透析チェアやベッドで過ごすことになる。安静の時間が続くと、筋力や身体機能の低下が懸念される。日常生活から、また、透析中でも取り入れられるレジスタンス運動や有酸素運動を組み合わせることで、筋力や体力の維持・増進が期待される。近年では透析運動療法の考え方や実践も徐々に広まってきており、適切なメディカルチェックやモニタリングのうえで取り入れていくことも検討されたい。
詳しくは、下記の新潟大学Webサイト参照
「透析の治療期間とフレイルの関連を発見-日本が誇る超長期透析患者の病態と課題-」
https://www.niigata-u.ac.jp/news/2024/637233/
【関連ページ】
●透析患者の運動療法
https://www.almediaweb.jp/diabetes_dialysis/diabetes_dialysis-003/
●「ディアケア プレミアム」
透析運動療法を始める前に:導入前の検査と運動処方 (実践ケア動画)
https://dearcare.almediaweb.jp/home/cat17/theme002/index.html
●「ディアケア プレミアム」
透析運動療法のメニューの例:透析室でも、ご自宅でも(実践ケア動画)
https://dearcare.almediaweb.jp/home/cat17/theme003/index.html
●「ディアケア プレミアム」
透析中の運動療法の実際 (実践ケア動画)
https://dearcare.almediaweb.jp/home/cat17/theme004/index.html
●「ディアケア プレミアム」
透析患者さんにもできる 仰臥位で行うレジスタンス運動
~運動指導のポイントも合わせて~(実践ケア動画)
https://dearcare.almediaweb.jp/home/cat17/theme005/index.html
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