2024/12/24
神戸大学大学院保健学研究科の金島侑司博士研究員や井澤和大准教授らの研究グループが、脳梗塞患者において標準体型よりも過体重~軽度肥満のほうが退院時の機能障害発生率が低いことを明らかにした。
本研究は、日本循環器学会のJROAD-DPCデータベース※を使用し、2016年4月から2020年3月までに脳梗塞で入院した約52万人の患者データ(20歳未満、院内死亡者、リハビリ未実施者を除外、年齢の中央値77.0歳)を解析。
体格指数はBMI(body mass index)を用いてやせ型(BMI≤18.5 kg/m2)、標準体重(18.5<BMI≤23 kg/m2)、過体重(23<BMI≤25 kg/m2)、軽度肥満(25<BMI≤30 kg/m2)、高度肥満(30≤BMI kg/m2)とし、機能障害はmRS(modified Rankin Scal、脳梗塞研究でよく用いられる評価法)を用いて退院時にmRS2(軽度の障害)より重度であった場合に機能障害を有していると判断。
解析の結果、やせ型は高齢で入院期間が長く、入院中に合併症の発症や入院費用の増加が見られた一方で、高度肥満は高血圧や糖尿病などの疾患割合が高いことがわかった。また、退院時の機能障害は全体で45.7%の脳梗塞患者にみられたが、BMI:22.1~27.5 kg/m2では機能障害が発生しにくく、BMI:24.7kg/m²で最も発生割合が低いことも明らかになった。そこからやせ型・肥満が進行するにつれて機能障害が発生しやすくなることが確認された。
同研究グループは、やや体重の多い方が脳梗塞発症後の機能障害に有利であるとの結果を受けて、今後は退院後の機能障害の経過なども調査を行い、今回の結果と同傾向になるのかさらなる検討が必要としている。また年齢を重ねても体型維持の重要性が示されたことで、「体型からのアプローチにより、脳梗塞後の機能障害を抱える方が一人でも減るよう、今後の研究に取り組んでいく」との考えを示した。
詳しくは、下記のWebサイトを参照
・神戸大学Webサイト
脳梗塞患者において過体重~軽度肥満だと退院時の機能障害が発生しにくいことを明らかに
https://www.kobe-u.ac.jp/ja/news/article/20241024-66173/
※JROAD-DPC(Japanese Registry of All Cardiac and Vascular Diseases Diagnosis Procedure Combination)データベース:日本循環器学会が構築するJROAD(循環器疾患診療実態調査)協力施設から、病名や診療行為の明細が含まれたDPCを収集し作成されたデータベース。得られたデータに基づいて、必要な情報を発信し、循環器診療の質を向上させるための基本的な資料とすることを目的としている。
【論文情報】
この研究成果は、2024年10月22日に『Topics in Stroke Rehabilitation』に発表された。
Kanejima Y,Ogawa M,Ishihara K,et al:Body mass index is associated with disability at discharge as indicated by the modified Rankin Scale in patients with ischemic stroke: a JROAD-DPC study.
DOI 10.1080/10749357.2024.2417644
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