2025/2/18
わが国の褥瘡有病率は、2021年の調査では、一般病院で2.37%、介護老人福祉施設では1.05%、介護老人保健施設では1.26%、訪問看護ステーションで1.26%となっている(*1)。諸外国と比べてきわめて低い有病率であり、看護師(皮膚・排泄ケア認定看護師)、医師(形成外科医、皮膚科医、他)、薬剤師、療法士、栄養士らの医療専門職が積み上げてきた褥瘡予防・治療のためのエビデンスが広く現場に普及していることがうかがわれる。
一方で、エビデンスに沿った予防措置をとっても、どうしても発生してしまう褥瘡があることが知られている。Unavoidable pressure injury:UPIは、これまで、“防ぎきれない褥瘡”の和訳で知られてきた褥瘡であり、終末期の皮膚変化に伴い発生するケネディ終末期潰瘍(Kennedy terminal ulcer:KTU)などに代表される。
日本褥瘡学会では、2021年に立ち上がった「防ぎきれない褥瘡対策作業部会」の活動の1つとして、このUPIの和訳名称についての検討を進めてきた。和訳変更の理由については、“将来的に日本褥瘡学会が実態調査を実施するにあたり、各施設における褥瘡発生率、有病率からUPIを除外するとした場合、電子カルテ等での取扱いを明確にするため”と述べられている。
この度、Unavoidable pressure injuryの和訳について、「不可避褥瘡(UPI)」とすることが発表された。合わせて、解説文についても、海外文献やコンセンサスパネル等を参考にし、わが国の実態に即した内容として以下のとおり発表されている。
「不可避褥瘡(UPI)」とは、
医療提供者が患者の身体状態および褥瘡の危険因子を評価し、褥瘡ガイドブックにある標準的ケアをふまえて、患者の身体状態およびニーズに合致した目標とあらゆる介入策を検討し試み、定期的に計画修正したにもかかわらず、発症した褥瘡をいう。
(日本褥瘡学会Webサイトより引用)
不可避褥瘡(UPI)は、虐待や褥瘡ケアの不足によって発生するものではないことが周知されれば、予期せぬ訴訟等から医療者をまもることにもつながるだろう。
定義作成に向けた検討(*2)も進められており、引き続き注視していきたい。
詳しくは、下記、日本褥瘡学会Webサイトを参照
・防ぎきれない褥瘡に関する「和訳名称変更」と「解説文」のお知らせ
https://www.jspu.org/news/wp-content/uploads/2025/01/20250106.pdf
【引用文献】
(*1)第5回(2021年度)日本褥瘡学会実態調査委員会報告1:療養場所別自重関連褥瘡と医療関連機器圧迫創傷を併せた「褥瘡」の有病率,有病者の特徴,部位・重症度.日本褥瘡学会誌 2023;25(2):96-118.
(*2)第5回一般社団法人日本創傷・オストミー・失禁管理学会学術教育委員会(オストミー・スキンケア担当):「防ぎきれない褥瘡」の定義策定に向けた検討:超高齢者における予備調査報告.日本創傷・オストミー・失禁管理学会誌 2023;27(3):546-552.
【関連ページ】
●最新ガイドライン、DESIGN-R® 2020に基づく 新 まるわかり褥瘡ケア
https://www.almediaweb.jp/pressureulcer/maruwakari/
●「ディアケア プレミアム」
症例写真でよくわかる DESIGN-R® 2020つけ方実践マスター
https://dearcare.almediaweb.jp/home/cat15/theme005/index.html
●「ディアケア プレミアム」
在宅で行う褥瘡ケアとスキンケア
https://dearcare.almediaweb.jp/home/cat15/theme004/index.html
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