2025/8/19
高齢者施設における入居者の健康状態の変化をいち早く察知するには、看護職と介護職の連携がきわめて重要であることが、上智大学、慶應義塾大学、広島大学などの研究グループによる共同調査で明らかになった。研究では、日本の高齢者施設で勤務する看護職23名に対するインタビュー調査を実施し、内容を解析。看護職は「準備(Preparing)」「評価(Assessing)」「判断(Judging)」の3つの実践(役割)を通じて、異常の早期発見につなげていることがわかった。
3つの役割の内容は次のとおり。
準備:入居者の「いつもの状態」を日常的に把握し、過去の病歴や体調の変遷を収集。介護職にも観察の視点を共有し、異変の早期発見を支援。
評価:介護職が感じた「何かいつもと違う」との報告や自らの観察を通して、わずかな変化も見逃さず、必要に応じて速やかに対応。
判断:これまでの臨床経験を踏まえ、医療的な介入の必要性を迅速に判断。
さらに、本研究では、健康状態の変化の兆候として、看護職が注視している10の主要な症状・状態が特定された。これには、以下のものが含まれる。
異常な体温 ; 摂食困難 怒りっぽさ
呼吸状態の異常 活動性の低下 体重減少 など
意識レベルの低下 表情や顔色の変化
こうしたサインを的確に捉えるためには、日常の観察力と判断力、すなわち看護職の「アセスメント力」が欠かせない。
同研究グループでは、本研究で得られた実践知をもとに、今後、「看護のアセスメント力を高めるための教育プログラムの開発や実践ツールの設計・実装に取り組んでいく予定」としている。介護職が捉えた小さな異変を、看護職が適切に解釈・判断するしくみが、救急搬送や入院の予防につながり、入居者の生活の質を守る鍵となる。
この研究が示すように、日々の観察の中で小さな異変を見抜く力は、看護の現場においてますます求められている。これは訪問看護の現場においても同様であり、在宅療養者の生活環境を含め、全体をとらえる視点と的確なフィジカルアセスメントの力が不可欠である。
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プレスリリースの詳細は、以下Webサイトで確認できる。
▼上智大学 プレスリリース
「高齢者施設の看護職と介護職の連携が入居者の健康状態の変化を察知する鍵に-看護職へのインタビュー調査で具体的な看護の役割を解明-」
https://www.sophia.ac.jp/jpn/article/news/release/20250610/
ディアケア プレミアムでは、2025年9月より「訪問看護のフィジカルアセスメント」と題した動画コンテンツを公開。本コンテンツでは、命に直結する「循環」「呼吸」、日常生活の質に影響を与える「排便」に注目し、それぞれの機能が正常かどうかを見きわめるための基礎知識と技術をわかりやすく解説している。
身体から読み取れるサインと、生活全体への影響をどう結びつけて考えるか。動画では、具体的な事例を通して、問診やフィジカルイグザミネーションの実践に役立つ視点を紹介。訪問看護に初めて携わる方から、より質の高いケアをめざしたい経験者まで、幅広く活用できる内容となっている。
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