2025/9/24
腸内細菌由来の代謝物質は、認知機能や免疫、炎症制御など、多様な生理機能の維持に重要な役割を果たしていることが知られている。多種多様な腸内細菌がバランスを保つことで構成されている腸内細菌叢を、望ましい方向へと変化させる「食事介入」が近年注目されている。
腸内細菌由来の代謝物質は、認知機能や免疫、炎症制御など、多様な生理機能の維持に重要な役割を果たしていることが知られている。多種多様な腸内細菌がバランスを保つことで構成されている腸内細菌叢を、望ましい方向へと変化させる「食事介入」が近年注目されている。
北里大学と慶應義塾大学の研究グループは、マウスを用いた研究で、絶食中に、腸内細菌が代謝可能な糖(MACs)を摂取することによって、腸内細菌叢を短期間で効率的に再構築する新たな食事介入法を開発した。
本研究では、まずは絶食が腸内細菌叢に与える影響について、マウスに36時間の完全絶食(飲水のみ)を行い、腸内細菌叢の構成変化を解析した。その結果、複数の細菌門での相対的な増減が観察され、顕著な構成変化が見られた。通常状態では細菌の複雑な相互作用によって保たれている腸内細菌叢の恒常性を、一時的に介助する手段として、絶食が有用な手段であることが実証された。
この状態で、ヒトの消化酵素では分解されず、腸内細菌のみによって代謝される糖質であるMACs(食物繊維、オリゴ糖など)を摂取させ、腸内細菌叢の構成変化を観察した。その結果、摂取させるMACsの種類や投与量、タイミングによって、特定の菌が優位に増殖する環境を人為的に構築できることも明らかとなった。さらに、特定の条件下で、腸内細菌叢の制御や感染防御に重要なIgA抗体の産生が有意に増強されることも明らかとなり、免疫機能の活性化に資する可能性が示唆された。
以上の結果から、絶食とMACsを組み合わせた食事介入が、短期間で腸内細菌叢の再構築と免疫機能の活性化をもたらすことが示された。今後、さまざまな食品成分・薬剤・治療法と組み合わせることで、個人の腸内環境や病態に応じた介入効果の最適化に貢献できる可能性がある。また、抗菌薬や過剰な薬物投与を伴わずに腸内環境や粘膜免疫に作用しうる点も、本手法の大きな利点と言える。
新たな栄養学的アプローチとして、疾患予防や治療への応用可能性も期待され、今後はヒトへの応用に向けて、さらなる研究と臨床的検証を通じた安全性・有効性の確認が求められる。
詳しくは、下記の北里大学Webサイト参照
「絶食と腸内細菌利用糖の併用により腸内環境を短時間で再構築
—特定腸内菌を選択的に増殖させる精密な食事介入戦略—」
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