2015/05/30創傷ケア
米国内科学会(American College of Physicians:ACP)は、褥瘡に関する「治療のためのクリニカルプラクティス・ガイドライン」と「予防のためのクリニカルプラクティス・ガイドライン」の2つを公表した。『Annals of Internal Medicine』誌に掲載されている。Ann Intern Med(2015; 162: 359-369,370-379)
これらのガイドラインは、MEDLINE、EMBASE、CINAHL、EBM Reviews、the Cochrane Central Register of Controlled Trialなどに2014年2月までに掲載された医学文献をシステマティックレビューしたもの。
治療のためのガイドライン
治療のためのガイドラインで評価したのは、褥瘡の完全治癒、創の縮小、疼痛、敗血症予防、骨髄炎予防、再発率、治療による有害事象などである。
設定した「エビデンスの質」「推奨の強さ」はACPの「クリニカルプラクティス・ガイドライン・グレーディング・システム」による。
ACPが検討した褥瘡の介入法の主なものを表1に示す。
表1 検討された主な介入法
その結果、褥瘡治療における介入に関しては、以下の3つの勧奨を行っている。
栄養の重要性、特にタンパク質、またはアミノ酸の補給については、最適な用量やタンパク質のタイプについてのエビデンスはない。また、これらの有効性を示した研究は栄養状態のよくない患者に行われたものが多く、栄養状態が十分な患者に対する効果については明らかではない。
ドレッシング材についてはハイドロコロイドドレッシング、フォームドレッシングの他にPDGF含有ドレッシング材についてもプラセボに対して効果があるというエビデンスが存在したが、コストを考慮して勧奨には入れていない。
また、電気刺激療法は、ステージ2~4の褥瘡の治癒を促進するエビデンスがあるが、虚弱な老人の場合は若年者に比べて有害事象が現れやすいというエビデンスもある。
予防のためのガイドライン
「予防のためのガイドライン」の中では、体圧分散とリスクアセスメントに関して以下の3つの勧奨を出している。
圧切替型マットレス、ローエアロス・マットレスについては、「高リスク患者における褥瘡予防で利益があるとのエビデンスがないにもかかわらず、米国では多くの病院で使用されている。これらの用具はコスト面で医療システムの負担となっている」と明記された。
このようにガイドラインにコスト面を重視する姿勢は、アメリカの医療システム、ならびに深刻な医療費抑制策を如実に反映している。日本でも今後、ガイドラインにこうした視点が影響してくる可能性があると思われる。
Ann Intern Med. 2015 Mar 3;162(5):359-69. doi: 10.7326/M14-1567
■上記ニュースに関連したディアケアコンテンツをご覧いただけます。
×close
©DEARCARE Co., Ltd.