2016/12/1創傷ケア
日本創傷治癒学会ガイドライン委員会が編集した書籍『創傷治癒コンセンサスドキュメント-手術手技から周術期管理まで-』の内容が興味深い。この本のコンセプトは「手術創をキレイに治す、医師・看護師のための本」となっており、キレイに治すための情報が満載されている。“コンセンサスドキュメント”として特徴的なのは、それぞれのステートメントについて、創傷治癒コンセンサスドキュメント作成ワーキンググループによるグループアンケート結果を掲載しているところである。同学会編集委員でミーティングを重ね、消毒・切開から閉創・術後管理までの現状をまとめ、ガイドラインに準じた指針の作成を目標としたものだ。その中から2つのステートメントを紹介しよう。
ステートメント67:被覆材は創の状態を観察できるものが望ましい
術後の感染徴候を早期に発見するためには創局所の炎症反応である発赤、熱感、腫脹、疼痛を観察する必要がある。この4所見のうち発赤、腫脹は目視による確認が可能であることから、創の状態を観察できるドレッシング材が望ましいとされている。これらにより、創の状態が観察できないガーゼを貼付した場合より異常の早期発見につながる、と述べられている。創傷治癒コンセンサスドキュメント作成ワーキンググループのアンケートでも「全面的に賛成」「ほぼ賛成」「どちらかというと賛成」を合わせると9割以上が、このステートメントに賛成している。
(執筆:紺家千津子)
ステートメント74:感染創にスルファジアジン銀含有クリームは有効である
スルファジアジン銀含有クリームとは商品名では“ゲーベン®クリーム”のことである。日本褥瘡学会の「褥瘡予防・管理ガイドライン」でも「CQ1.11 褥瘡に感染・炎症を伴う場合、どのような外用薬を用いたらよいか」に対して「推奨度B:感染抑制作用を有するカデキソマー・ヨウ素、スルファジアジン銀、ポビドンヨード・シュガーを用いることが勧められる」とされている。ゲーベン®クリームの殺菌効果としては、銀が細胞膜や細胞壁に作用するということ、さらに銀が細菌のDNAに取り込まれてDNAの合成を阻害することが挙げられている。これにより感染創での細菌増殖抑制が期待されている。今回の創傷治癒コンセンサスドキュメント作成ワーキンググループのアンケートでも、「全面的に賛成」15%、「ほぼ賛成」17%、「どちらかと言うと賛成」23%という数字が示されたが、その有効性に関しては明白なエビデンスに乏しいと記載されている。
(執筆:塚田邦夫)
詳しくは、下記の全日本病院出版会Webサイト参照
■上記ニュースに関連したディアケアコンテンツをご覧いただけます。
×close
©DEARCARE Co., Ltd.