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2018/01/17
診療報酬改定で検討されている「入院患者に対する褥瘡対策」
注目を集める2018年度の診療報酬・介護報酬同時改定の動きが加速している。2017年12月18日には、診療報酬、介護報酬、障害福祉サービス等報酬の3報酬の改定率が固まった。診療報酬本体を0.55%引き上げる一方、薬価1.65%、材料価格0.09%それぞれ引き下げで、診療報酬全体では1.19%のマイナス改定になる見込みだ。介護報酬は0.54%増、障害福祉サービス等報酬は0.47%増が決まった。それぞれの技術料の見直しの検討も大詰めを迎えそうだが、ここでは褥瘡関連の情報を紹介する。「入院医療」の中の「入院患者に対する褥瘡対策」として検討されている項目だ。ただし、これはあくまでも検討中のものであるため、今後の動向を見守りたい。
褥瘡対策の課題として掲げられているのは、「入院中の新たな褥瘡発生予防」「ADL維持向上等体制加算における褥瘡評価」「療養病床における褥瘡対策」の3項目だ。
【課題】
○入院中の新たな褥瘡発生予防
- 褥瘡を保有している入院患者は4.8%であり、そのうち入院時に既に褥瘡を保有していた患者は2.2%、入院中に新たに褥瘡が発生した患者は2.5%である。
- 一般病院における褥瘡保有者のうち2割弱は医療関連機器による圧迫で生じる組織の損傷(MDRPU)であり、MDRPUのほとんどが入院中に発生している。
- また、摩擦・ずれによって、皮膚が裂けて生じる真皮深層までの損傷(部分層損傷)であるスキン-テア(皮膚裂傷)の有病率は0.77%であり、テープ剥離時に発生することが多い。
○ADL維持向上等体制加算における褥瘡評価
- ADL維持向上等体制加算のアウトカム評価として院内褥瘡発生率が1.5%未満であることを求めているが、1病棟のみでADL維持向上等体制加算を算定する場合等は、当該病棟において1人でも新たに褥瘡が発生すると、施設基準を満たさなくなる。
○療養病床における褥瘡対策
- 療養病棟のADL区分3の患者は、特に褥瘡等が生じやすい状態であることから、「褥瘡評価実施加算」があり、9割以上の患者で算定されている。
- 療養病棟は、一般病棟に比べ褥瘡を保有している入院患者が多いが、医療機関毎の新規発生率等は医療機関間の差が大きく、3割弱の医療機関は0%であるが、1割以上の医療機関は保有率・発生率共に10%を超えている。
- 療養病棟での褥瘡評価は、入院時の評価とは別の評価票で行っている。
これらの課題を踏まえて、「入院患者に対する褥瘡対策の論点(案)」として以下の点が挙げられている。
- 入院中の新たな褥瘡発生予防
入院中の新たな褥瘡発生を予防するために、適切なリスクアセスメントに基づく予防と管理が実施されるよう、
①入院時に行う褥瘡に関する危険因子の評価の中に、スキン-テア(皮膚裂傷)を加えてはどうか。
②褥瘡ハイリスク患者ケア加算の対象者に、医療関連機器の長期使用者を加えてはどうか。
- ADL維持向上等体制加算における褥瘡評価
ADL維持向上等体制加算のアウトカム評価として求めている院内褥瘡発生率について、どのように考えるか。
- 療養病床における褥瘡対策
療養病床における褥瘡に関する評価について、入院時から統一した評価票とし、また、褥瘡対策がより推進されるよう、褥瘡評価実施加算の要件にアウトカムの視点で評価することとしてはどうか。
これらの項目が診療報酬に反映されれば、現場の看護師の業務に影響することは必至である。
詳しくは、下記の厚生労働省Webサイト参照
・「診療報酬・介護報酬・障害福祉サービス等報酬改定について」
http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000188402.html
・「入院医療(その8) 平成29年12月6日」
http://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-12404000-Hokenkyoku-Iryouka/0000187182.pdf
- ※この記事内容は公開当時の情報です。ご留意ください。