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2019/9/4

治りにくい褥瘡は、どうして起こる? 群馬大学の研究グループがメカニズム解明を発表

日本褥瘡学会等の活動が功を奏して、褥瘡の有病率は有意に改善しているが、依然として、“治りにくい”褥瘡に悩まされている医療従事者は多い。なぜ、治りにくい褥瘡が発症するのか、長年の疑問に答える研究が発表された。これは、群馬大学大学院医学系研究科皮膚科学・茂木精一郎准教授らの研究グループが、同大学大学院医学系研究科口腔顎顔面外科学・形成外科学などと共同で行ったものだ。

高齢者は、脂肪・筋肉量の変化や骨突出などの加齢による変化によって褥瘡が生じやすい。以前から経験的に、治りにくい褥瘡の要因の1つに亜鉛欠乏があるのではないかと言われていた。亜鉛は生体において必須な微量元素だが、高齢者では摂取量不足、腸管の吸収率低下、生活習慣病の合併などによって亜鉛欠乏症が起こりやすい。しかし、これまで、亜鉛欠乏によって褥瘡が生じやすく、治りにくくなることを科学的に証明した研究は報告されていなかった。

今回、研究グループでは、亜鉛欠乏食と亜鉛含有食を2週間与えたマウスを用い、マグネットを用いた皮膚の圧迫による褥瘡モデルを作製し、圧迫部に生じる褥瘡の面積を比較した。その結果、亜鉛欠乏マウスでは皮膚の圧迫による褥瘡の大きさが有意に増大し、治癒も延びることがわかった。さらに、亜鉛欠乏マウスの褥瘡部位を調べたところ、正常マウスと比べて血管量が少なくなっており、その結果生じた低酸素によって酸化ストレス[*注1]が増加したことがわかった。

酸化ストレスが誘導されると、活性酸素種(ROS)[*注2]による組織傷害が起こる。そして、細胞内に発生した活性酸素種(ROS)の分解酵素であるSODは亜鉛を必要とするため、亜鉛欠乏によってROS量が増加し、酸化ストレスが亢進することが考えられる。そこで、酸化ストレスを可視化できるマウス(OKD48マウス)に亜鉛欠乏食を摂取させ、褥瘡部位における酸化ストレスの程度を検討した。その結果、OKD48マウスの褥瘡部位の酸化ストレスシグナルは、亜鉛欠乏マウスにおいて有意に増強していた。このことから、亜鉛欠乏によって生じる酸化ストレスの増加が治りづらい褥瘡を起こすメカニズムの1つと考えられる。

また、研究グループは細胞外ATP[*注3]による炎症についても着目した。細胞外ATPは、自己由来の炎症を引き起こす因子で、物理的刺激や低酸素刺激によって細胞外に放出される。褥瘡においても、皮膚の圧迫による刺激によってATPが細胞外に放出されると想定される。そこで褥瘡部位における細胞外ATP量を測定したところ、亜鉛欠乏状態で増加することがわかった。そして、細胞外ATPの分解酵素は亜鉛欠乏によって低下・機能不全となることもわかったため、細胞外ATPが分解されずに増加し、さらなる炎症が強く引き起こされる可能性がある。この機序も、褥瘡が治りづらいメカニズムの1つと考えられる。
また、亜鉛欠乏マウスへの亜鉛の経口補充による治療効果についても検討した結果、亜鉛の経口補充によって、亜鉛欠乏マウスで増悪した褥瘡が著明に改善したという。

同研究グループは、本研究の結果から、褥瘡患者では血清亜鉛値(血液中の亜鉛濃度)を測定して、低亜鉛の場合は積極的に亜鉛の経口補充を行うことで、褥瘡の改善や治療につながる可能性が考えられるとした。また、高齢者などの褥瘡を起こすリスクの高い患者においても積極的に血清亜鉛値を測定し、低亜鉛であれば経口補充することで、褥瘡の発生予防にもつながると考えられるとしている。

*注1 酸化ストレス:活性酸素(ROS)が産生され、周囲の組織を傷つける生体作用
*注2 活性酸素種(ROS):活性酸素種(Reactive Oxygen Species)。酸素分子がより反応性の高い化合物に変化したもので細胞に損傷を与える
*注3 細胞外ATP:アデノシン三リン酸。細胞内では生命活動に必須のエネルギー産生を制御する

詳しくは、下記の国立大学法人群馬大学Webサイト参照

http://www.gunma-u.ac.jp/information/56402

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