2018/3/23
ストーマ保有者は、ストーマ管理、日常生活、社会生活のあらゆる側面で、さまざまな問題を抱えている。そうした多岐にわたる悩みごとを相談する窓口としてストーマ外来は重要である。現在、日本創傷・オストミー・失禁管理学会のホームページに登録されているストーマ外来をもつ病院は666病院ある。実際にストーマ保有者はどのような困りごとを持っていて、誰に相談しているかについての実態調査が報告された。特定非営利活動法人ストーマ・イメージアップ・プロジェクトの調査によるもので、日本創傷・オストミー・失禁管理学会誌の第21巻3号に掲載された。論文名は、「質問紙調査による消化管ストーマ保有者の生活における困った経験と相談先の実態調査」である。
この調査は、あるストーマ装具販売店でストーマ装具を注文した3,000人のうちの消化管ストーマ保有者を対象にしたものである。内訳は、結腸ストーマ保有者490人、小腸ストーマ保有者98人の合計588人。年代は60歳以上が78.7%、性別では男性58.2%、術後年数は5年以下が82.9%であった。
ストーマ管理において困ったことの上位3項目は、「皮膚がただれた」(51%)、「排泄物がもれた」(50.9%)、「お腹の形が変わってきた」であった(40%)。このうち、「皮膚がただれた」「排泄物がもれた」では、結腸ストーマよりも小腸ストーマのほうが多かった。小腸ストーマは消化酵素の活性が高い水様性の便が多量に排泄されるため皮膚障害の発生が問題になるようだ。
日常生活の上位3位は、「温泉に行けなくなった」(53.7%)、「装具のもちが悪くなるため入浴回数を制限している」(47.4%)、「下痢になることでストーマ管理がむずかしくなるから困った」(39.6%)であった。一方、ストーマ保有者の74%が自宅以外で入浴を経験して「自信がついた」と答えている現状も見られ、複雑な心情がうかがえる。
社会生活の上位3位は、「装具代が負担になっている」(39.5%)、「人の多いところは避けるようになった」(27.2%)、「仕事が手術前のようにできなくなった」(25.5%)であった。「装具代が負担になっている」のは、結腸ストーマのほうが小腸ストーマより多かった。小腸ストーマは水様便で量が多いため、ストーマ装具の交換間隔が短いことが要因ではないかと推察されている。
これらの相談先として最も多かったのは、皮膚・排泄ケア認定看護師(WOCN)であった。2001年には相談項目にかかわらず相談先としては医師が最も多かったという実態を考えると、皮膚・排泄ケア認定看護師の数が急増したとはいえ、その役割が明確になってきていることがわかる。ストーマ外来に関しては、定期的にストーマ外来を受診していると答えた人は50%であり、術後1年未満は64%と最も多かった。ストーマをもって生活する人たちにとって、ストーマ外来、ならびに皮膚・排泄ケア認定看護師は、頼りになる存在であることがわかる。
ストーマ保有者の生活における困った経験(抜粋)
ストーマ管理で困った経験 |
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日常生活で困った経験 |
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社会生活で困った経験 |
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文献
片岡ひとみ,酒井透江,松原康美,ほか:質問紙調査による消化管ストーマ保有者の生活における困った経験と相談先の実態調査.日本創傷・オストミー・失禁管理学会誌;21(3):273-280.
詳しくは、下記の日本創傷・オストミー・失禁管理学会Webサイト参照
https://www.sasj.net/journal/JSWOCM/articles.cgi?V00021+N00002
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