2020/6/4
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)対策として、医療・看護系のさまざまな学会・団体から個々の治療やケアに関する指針が出されているが、ストーマケアを行う医療従事者に対しても学会からの指針が公表されている。
1つは、日本ストーマ・排泄リハビリテーション学会が発表した「新型コロナウイルス蔓延に対するストーマケア時の対応指針」だ。これは、感染、あるいは感染が疑われるストーマ保有者のストーマケアを行う機会が増加すると予想されることから同学会災害対策委員会が作成したものとなっている。COVID-19では「無症状や感染リスクが低い患者からの感染」「糞尿中からのウイルス検出」が報告されていること、さらに手技の特性から密室に近い部屋を用いることが多いストーマケアの実施には細心の注意が必要であることから、以下のように適切な感染防護策による慎重な対応の重要性を訴えている。
■新型コロナウイルス蔓延に対するストーマケア時の対応指針
A)ストーマケアの必要性を見直し、代替え手段について検討する
B)ストーマケアによる感染リスクを評価してリスク分類し、対応法を決定する
C)リスク分類を元に、適切な場所を選択する
D)適切な個人用防護具(PPE:Personal Protective Equipment)を用いる
E)使用した器材は適切に処理する
F)ストーマケア後の遵守事項、病院の行うべき行動については、コロナ陽性例に対する一般の治療・処置後の医療従事者と同等である
例えば、「A)ストーマ外来受診の必要性を見直し、代替え手段について検討する」では、①ストーマ保有者毎に対面で行うストーマケアが必須か、定期受診であれば時期を延期できないか再考する、②施設の事情と照らし合わせ、電話による相談や、web経由で送付された画像を共有しつつ行う相談についても選択肢に入れる、等の具体策が示されている。
また、「E)使用した器材は適切に処理する」では、以下のような具体策が挙げられている。
①PCR検査で陰性が確認され、かつ症状がないストーマ保有者のケアで生じた廃棄物は通常の感染性廃棄物と同様に廃棄する。
②施設の基準でローリスクと判断する場合は、PCR陰性例に準じる。
③陽性例に使用した材料は2重のビニール袋に入れ、硬く口を閉じた後、感染性廃棄物として廃棄する。ビニール袋の口を閉じる際に中の空気を抜く操作をしてはいけない。複雑な構造の機器(ストーマの状態を撮影するカメラなど)は極力使用しない。使用した場合は、使用した部屋からストーマ保有者が退室した後6日以上移動させない(新型コロナウイルスは様々な物体の表面で数日にわたり感染力を有することが示されている)。
ただし、「この指針は現時点での情報を元に網羅的に記載したものであり、その実施および従来通りの運用への切り替えについては、各施設で地域の現状を元に適宜読み換えることが望まれる」とし、「今後の新たな知見や状況の変化により適宜変更する可能性があること」も付記されている。
詳しくは、下記の「日本ストーマ・排泄リハビリテーション学会>新型コロナウイルス蔓延に対するストーマケア時の対応指針」参照
もう1つは、日本創傷・オストミー・失禁管理学会の「ストーマ外来及びストーマケア時におけるCOVID-19 感染予防策について」というお知らせだ。
「ストーマ外来は、密な環境になりやすく、ウイルスの最終的な出口となる排泄物に関わるケアとなります。緊急事態宣言が解除となりましたが、ウイルスそのものが消滅したわけではありません。そのため、排泄ケアを実施する際は、施設での感染対策マニュアルに準拠した標準感染予防策の徹底をお願いします。」として、以下のような項目を挙げている。
●標準感染予防策
・個人防護具(ディスポエプロン、プラスチック手袋、フェイスシールド等)の装着
・手指衛生の徹底
・排泄物処理
●ストーマケア時の使用物品
・患者の物品(ストーマはさみ等)を使用する
・ストーマのサイズ計測には、紙製のゲージ等の使用(使い捨て)。ノギスを使用する場合は、ビニール袋に入れて使用する等、施設の感染対策マニュアルに準拠する。
●ストーマケア後の環境整備
・診察後の診察台、椅子等の消毒
・使用物品の消毒
・換気
詳しくは、下記の日本創傷・オストミー・失禁管理学会Webサイト参照
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