※パスワードの変更もこちらから
2020年5月公開
佐野裕子
順天堂大学 医療看護学部
大学院 医療看護学研究科 臨床病態学分野
准教授/理学療法士(2021年4月現在)
在宅や老人保健福祉施設などで、脳血管疾患や神経筋疾患、整形外科疾患の患者、利用者の方が、息切れが原因で運動ができなかったり、日常生活動作がスムーズにできなかったりする場面に遭遇することがあります。苦しいので動くことが億劫になり、出歩くことに不安や恐怖心さえ抱くようになり、どんどん廃用が進行してしまいます。脳梗塞や虚血性心疾患など、多くの疾患の原因として喫煙が関連しています。つまり、老化や廃用による呼吸機能の低下だけではなく、喫煙が原因で生じる“COPD”が潜んでいることがあります。
慢性閉塞性肺疾患(COPD)は、“Chronic obstructive pulmonary disease”の略で、従来は、慢性気管支炎や肺気腫と呼ばれてきた病気の総称です。わが国では約530万人と推定されていますが(NICE studyによる)、実際に治療されているのは十数万人であり、COPDと診断されていなくても実際はそうである方々が多く存在します。WHO(世界保健機関)の2015年の調査では、COPDは死亡原因の第4位に位置づけられていますが、今後は第3位になると予測しています。
COPDの最大の危険因子は、“タバコ煙”です。喫煙者の15~20%がCOPDを発症するといわれています。タバコは、まさに「百害あって一利なし」です。タバコ煙を吸入、曝露することで気道や肺の炎症が起こり、咳や痰が出たり、気管支が細くなることによって空気の流れが低下します。また、肺胞が破壊されて、肺気腫という状態になると、酸素の取り込みや二酸化炭素を排出する機能が低下してしまいます。COPDではこれらの病変が複合的に起こっています。
この特集では、COPDという疾患についての理解から始まり、息苦しさを訴える患者さんに対してどのように評価し、アプローチをするか、呼吸リハビリテーションの観点から紹介します。
©DEARCARE Co., Ltd.