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2020年5月公開
Part1 息切れを訴えるCOPDとはどのような疾患ですか?
佐野裕子
順天堂大学 医療看護学部
大学院 医療看護学研究科 臨床病態学分野
准教授/理学療法士
慢性閉塞性肺疾患(Chronic obstructive pulmonary disease: COPD)とは、タバコ煙の曝露を主な原因とする閉塞性換気障害です。『COPD(慢性閉塞性肺疾患)診断と治療のためのガイドライン第5版』1では、以下のように定義されています。
「タバコ煙を主とする有害物質を長期に吸入曝露することなどにより生ずる肺疾患であり、呼吸機能検査で気流閉塞を示す。気流閉塞は末梢気道病変と気腫性病変がさまざまな割合で複合的に関与し起こる。臨床的には徐々に進行する労作時の呼吸困難や慢性の咳、痰を示すが、これらの症状に乏しいこともある。」
COPDでは、中枢気道、末梢気道、肺胞領域、肺血管に病変がみられ、これらはタバコ煙などの有害物質の吸入による炎症が原因です。末梢気道では粘液分泌物の貯留や気道壁の線維化、平滑筋の肥厚などによって気道の変形と狭窄が起こり、細気管支の破壊は気道を消失させ、気流閉塞の原因になります(図1)。
図1 COPDでは何が起こる?
また、肺胞領域では気腫性病変(肺気腫)がみられ、肺胞が破壊されると気道の内腔を広げる力が弱まって気流閉塞や呼気時のair trapping(空気とらえこみ現象)の原因になります。きちんと毎回息を吐いたつもりでも空気が肺の中にたまっていき、肺が過度に膨張します。息切れが強くなり、動脈血中の酸素も低下します。これらを予防する1つの手段は“薬物療法”であり、その中心は“気管支拡張薬”です。気管支平滑筋の弛緩作用によって、気道抵抗の低下や肺過膨張の改善作用が見込まれます。このような薬物療法や酸素療法などの治療と、呼吸リハビリテーションや栄養療法などの非薬物療法は、両輪で行う治療介入として重要視されています2。
COPDは長期間の喫煙歴のある中高年に多く発症するため、喫煙や加齢に伴う併存症(表1)が多く、予後や日常生活動作(Activities of Daily Living : ADL)、QOL(Quality of life : 生活の質)にも影響を及ぼします。代謝性疾患や心疾患の併存は運動能の改善を抑制するという報告もあります3。呼吸リハビリテーションを進める上で全身評価、リスク管理が必要なのは言うまでもありません。
表1 COPD併存症
栄養障害 | 脂肪量の減少・除脂肪量の減少 |
骨格筋機能障害 | 筋力低下・筋繊維構成・酵素活性の変化・サルコペニア・フレイル |
心・血管疾患 | 高血圧症・心筋梗塞・狭心症・不整脈・脳血管障害 |
骨粗鬆症 | 脊椎圧迫骨折・大腿骨頸部骨折・腰痛 |
精神疾患 | 不安・抑うつ |
代謝性疾患 | 糖尿病・メタボリックシンドローム |
消化器疾患 | 胃潰瘍・GERD |
閉塞性睡眠時無呼吸 | - |
文献1より引用一部改変
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