※パスワードの変更もこちらから
2022年1月公開
ストーマ管理で困っているのは「ストーマ袋がふくらむ」と
「におい」の問題
『エキスパートナース』編集部
2017年の調査ではストーマの管理で困った経験がある人は86%もいることがわかりました。その中で最も多い「困ったこと」は「ストーマ袋がふくらむ」(40.7%)でした。そして、「ストーマ装具の価格が高い」「皮膚がただれる」「においが気になる」「便や尿がもれる」と続きます。2011年の調査では、項目として「ストーマ袋がふくらむ」というのがなかったため、「便や尿がもれる」「皮膚がただれる」「お腹の形が変わってきた」「健康状態が気になる」などが挙がっています(図1)。2017年の調査で「ストーマ袋がふくらむ」を項目として入れたのは、2011年の調査時の自由記載で多かったことを反映したためです。
図1 ストーマ管理で困った経験(トップ10)
2つの調査を比べてわかるのは、「もれ」と「皮膚のただれ」は減少し、「袋のふくらみ(Ballooning)」と「におい」が増加していることです。ストーマ保有者の日常生活に影響を及ぼす「もれ」や「皮膚のただれ」が減少傾向にあることはとてもいいことで、それは、この6年間で多種多様な装具が開発され、局所状態のアセスメントのもとで、早期に適切な装具を選択することが可能になったと推察されます。
一方で「袋のふくらみ」と「におい」については、脱臭フィルターを含む袋の構造など、装具の選択のみでは解決することができず、依然として困った問題として課題が残されているようです。
2011年調査の自由記載では、ストーマ管理に関して以下のような声が非常に多くありました。
・ガスが多く、バッグが風船のようにふくらんで困る
・ガス抜きが上手にできない。パンパンになる
・ガスがたまってふくれる
・脱臭フィルターがつまりやすい
・ストーマ排泄口と採便袋のフィルター部分が一致しており、フィルターがすぐつまる
2017年調査でも、「袋にガスがたまり夜中に目を覚ます」「空気がたまって膨張し、便がもれる」などの自由記載があります。
三富: 実感としても、こういう相談は多いように思います。水様便のような水っぽい便が出ると脱臭フィルターの機能が悪くなって目詰まりを起こして袋がふくらんでしまいます。各メーカーで撥水加工をするなど改良を重ねているのですが、バルーン現象が起こって、下から空気を抜かなければならなくなります。
片岡: 各社、さまざまな工夫をして改良しています。ただ、硬い便だけが出るわけではなく、腸液や粘液が混じることもあるので構造が難しくなるのですね。構造上はガスは抜けるけれど、いったん袋にポワンとたまってしまうので、袋がふくらんだように感じてしまいます。
松原: 私も脱臭フィルターの研究をしたことがあるのですが、ガスが抜けるとにおいも同時に出てしまうわけで、構造的に非常に難しいと思います。
渡邉: 脱臭フィルターなどが後付で販売されることはありますが、いつの間にか販売中止になったりします。それはストーマ製品は海外製品が多く、外国では保険制度の違いもあって、ガスが気になる前に装具を交換してしまうなど、習慣の違いもあるのかなと……。
安藤: もう1つは価格との関係ですね。ガス抜き機能と防臭性を同時に解消できる技術はあるのかも知れませんが、実際に利用者が使える価格内でおさまるように開発できるかどうかということもあるのではないでしょうか。ストーマ装具の価格というのは、利用者にとってはとても重要なのです。
松原: 構造的には活性炭をくぐり抜けてガスが出るという仕組みになって、においはだいぶ改善されたと思います。排出口の仕組みがよくなったのでしょうね。
安藤: におい自体を気にされている方は多いでしょうが、脱臭フィルターからもれるにおいは、松原さんが言うように改善されたと思います。
渡邉: 一般的な傾向ですが、においに対する一般社会の感度は上がっているのかなとは思います。洗濯物にもフレグランスを使っているし、トイレの後は消臭剤をまいたり、においに敏感になっている社会背景というのはありそうです。
©DEARCARE Co., Ltd.