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2023年3月公開
Part1 がん患者の緩和ケア
2.最良のQOLとは?
角甲 純
三重大学大学院医学系研究科 看護学専攻
実践看護学領域(がん看護学分野)教授
がん看護専門看護師
角甲 純
三重大学大学院医学系研究科 看護学専攻
実践看護学領域(がん看護学分野)教授
がん看護専門看護師
最良のQOL とは、誰にとって「最良」なのでしょうか。もちろん、患者さんやご家族にとって最良であり、ケア提供者にとっての最良とは異なります。また、患者さんやご家族によって、最良のQOL は異なることにも気をつける必要があります。
日本人に共通する望ましい死の在り方についての調査結果では、多くの人が共通して重要と考える10項目(コア10ドメイン:「苦痛がない」「望んだ場所で過ごす」「希望や楽しみがある」等)と、人によって大切さは異なるが重要なことである8項目(オプショナル8ドメイン:「できるだけの治療を受ける」「自然な形で過ごす」「伝えたいことを伝えておける」等)が報告されています。詳しくは表1をご覧ください1。
表1 患者・家族が臨死期に望むこと
日本人の多くが共通して大切にしていること | 人によって重要さは異なるが大切にしていること |
---|---|
●苦痛がない ●望んだ場所で過ごす ●希望や楽しみがある ●医師や看護師を信頼できる ●負担にならない ●家族や友人と良い関係でいる ●自立している ●落ち着いた環境で過ごす ●人として大切にされる ●人生を全うしたと感じる |
●できるだけの治療を受ける ●自然な形で過ごす ●伝えたいことを伝えておける ●先々のことを自分で決められる ●病気や死を意識しない ●他人に弱った姿を見せない ●生きている価値を感じられる ●信仰に支えられている |
文献1を参考に作成
ここに挙げられた18項目はいずれも重要ですが、オプショナル8ドメインは、より個別性が反映されている項目となります。また、もし患者さんやご家族にとっての最良のQOLが見えづらいときには、これらの項目をヒントにアセスメントしていくことも重要です。他にも、在宅で過ごしたいという希望を抱きながらも、「十分な医療が受けられないのではないか」「何かあったときに対応できるのだろうか」という不安を感じている方がいるかもしれません。そのような場合には、「希望する場所で過ごしたいと願うことは当然の感情である」ことをお伝えするとともに、QOLの観点から考えてみると、在宅で過ごすことは「望んだ場所で過ごせる」「医療者との良好な関係」「家族との良好な関係」「希望と楽しみがある」という項目で、一般病棟や緩和ケア病棟で過ごすよりも優れている(図3)2ことを情報提供することも、重要な支援の1つになるかもしれません。
図3 最期を過ごす場所とQOLの比較
文献2より引用
©DEARCARE Co., Ltd.