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2023年3月公開
Part1 がん患者の緩和ケア
4.がん患者の症状に対するケア提供の考え方とは?
角甲 純
三重大学大学院医学系研究科 看護学専攻
実践看護学領域(がん看護学分野)教授
がん看護専門看護師
角甲 純
三重大学大学院医学系研究科 看護学専攻
実践看護学領域(がん看護学分野)教授
がん看護専門看護師
患者さんが体験されている症状を緩和するためには、まずは身体所見を確認し、症状の評価を行っていきます。特に、その症状が、どのようなときに緩和(軽快)しているのか(緩和因子)、あるいは増悪しているのか(増悪因子)を評価することは重要です。必要に応じて血液検査や画像検査などが行われ、原因となる病態が総合的に診断されていきます。治療の原則は、その症状の原因に応じた対応となりますが、進行がん患者さんではその対応が困難な場面も少なくありません。そのような場合には、対症療法として薬物療法や非薬物療法が選択されます。
私たちが提供する支援(看護ケアや介護)の多くは、非薬物療法(ここでは、“支援”と表現します)に含まれます。では、目の前の患者さんの症状を緩和するために、どのような支援が提供されると患者さんにとってよりよいでしょうか。それは、研究論文で効果があると言われている支援かもしれませんし、患者さんが好まれている支援かもしれません。ここでは、支援を提供させていただく際の考え方を、図6に沿って説明します。
図6 緩和ケア支援提供の実施フロー
例えば、呼吸困難のある患者さんで、日に何度か呼吸困難が増悪する時間があり、症状の増悪予防または緩和を希望されているとします。そのような場合、まずは患者さんに呼吸困難に対する過去の対処方法(=対処規制)とその効果(=成功体験)を尋ねます。今までどおりの方法で対処を希望される場合、その対処方法が現在の環境下でも実施可能かどうかを検討します。実施可能であれば支援を実施し、その効果を評価します。その結果、満足のいく緩和が得られていれば、その支援を継続することが望ましいと評価します。一方で、過去の対処規制で成功体験がない場合や、成功体験があったとしても、現在の環境下での実施が困難だと判断した場合には、新たな支援を提案します。提案する支援については、患者さんの趣向とエビデンス(研究論文による根拠)、実践知から探り、現在の環境下での実施可能性を考慮します。
このように考えると、患者さんの趣向に沿った支援を提供できるよう事前に(患者さんの症状がつらくないタイミングで)、希望する支援や期待する緩和の程度について話しておくことが重要です。同時に、その症状に対する緩和効果の期待できる支援を把握しておくことも重要です。緩和効果の期待できる支援は、エビデンスやケア提供者の実践知が参考になります。エビデンスは研究論文から把握でき、実践知は日ごろの積み重ねが重要となります。患者さんが体験している症状に対して、どのようにアセスメントしてその支援を提供したのか、その結果、患者さんの症状はどのように変化したのかを評価していくことがとても重要です。
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