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2023年3月公開
Part2 がん患者の予後予測
Key point
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生存期間の予測をすることは、患者さんやご家族が今後の目標や優先順位を考える際にとても重要です。また、生存期間の予測とともに死期が差し迫っていることを把握し、患者さんやご家族が必要とされている支援を受けられるように調整していくことも必要です。ここでは、生存期間の予測と身体症状の変化について考えたいと思います。
1.生命予後を予測する方法とは
角甲 純
三重大学大学院医学系研究科 看護学専攻
実践看護学領域(がん看護学分野)教授
がん看護専門看護師
角甲 純
三重大学大学院医学系研究科 看護学専攻
実践看護学領域(がん看護学分野)教授
がん看護専門看護師
がん患者さんの生命予後を予測する方法は、医師の経験則によるものと、ツールを用いた方法の2つに大きく分けられます。医師の経験則によるものは、CPS(clinical prediction of survival)とも呼ばれ、臨床ではよく用いられていますが、実際の生命予後と比較すると、長く見積もる傾向があるようです1。この傾向は、緩和ケアを専門としている医師も同様だと言われており、生命予後を予測する難しさがあると考えられます。
適切な生命予後を予測することを目的に開発されたのが、予後予測指標と呼ばれるツールです。緩和ケア領域において、入院以外の環境で使用しやすいツールの1つとしてPalliative Performance Index(PPI)2があります(表1)。PPIは合計得点が6.5点以上の場合、3週間以内にお亡くなりになる可能性が高いと言われています。評価に際して血液検査の必要がなく比較的簡便に使用できますが、せん妄の診断を必要とすることから、医師以外の医療スタッフの使用は難しいと言われています。そこで、PPI をより使いやすくするために、せん妄の有無を自発的なコミュニケーションにおける「つじつまが合わない」ことに置き換えたsimplified PPIが開発されています3。医師以外の医療者が使用する場合には、simplified PPIが使いやすいと思います。そのほかにも、緩和ケア領域では、30日生存確率を予測するPalliative Prognostic Score(PaP Score)4がよく使われています。PaP Scoreは、血液検査(白血球数、リンパ球の割合)が必要なため、入院以外の環境では少し使いづらいかもしれません。
表1 PPI(Palliative Prognostic Index)
Palliative Performance Scale | 10~20 30~50 60以上 |
4.0 2.5 0 |
経口摂取量* | 著明に減少(数口以下) 中程度減少(減少しているが数口よりは多い) 正常 |
2.5 1.0 0 |
浮腫 | あり なし |
1.0 0 |
安静時呼吸困難 | あり なし |
3.5 0 |
せん妄 | あり(原因が薬物療法単独の者は含めない) なし |
4.0 0 |
*消化管閉塞のため高カロリー輸液を施行している場合は0点とする。
simplified PPIでは、「ややつじつまが合わない」「明らかにつじつまが合わない」場合をせん妄ありに代用する。
引用文献2を参考に作成
©ALCARE Co., Ltd.