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2023年3月公開
Part1 がん患者の緩和ケア
3.がん患者の身体症状の変化とは
角甲 純
三重大学大学院医学系研究科 看護学専攻
実践看護学領域(がん看護学分野)教授
がん看護専門看護師
角甲 純
三重大学大学院医学系研究科 看護学専攻
実践看護学領域(がん看護学分野)教授
がん看護専門看護師
がん患者さんは、さまざまな症状を体験し、その症状の存在や強さが最良のQOLの達成を阻害する要素になることは少なくありません。患者さんが体験される症状と、その症状がどのように変化する可能性があるのかを知ることは、患者さんやご家族がより適切なケアを受けるためには必要です。進行がん患者さんが体験される症状をまとめた研究報告1によると、倦怠感、疼痛、脱力感、食欲不振は半数以上の患者さんが体験しているようです(図4)。そのほか、口喝、気分の落ち込み、便秘、不眠、呼吸困難、悪心、不安については、およそ3人に1人が経験しています。
図4 がん患者が体験する症状
文献1を参考に作成
次に、これらの症状が、お亡くなりになるまでにどのように変化するかを調べた報告があります2。この調査では、死亡前6か月からお亡くなりになるまでの期間について、身体症状と精神症状の強さの変化を経時的にみています。症状の強さは、エドモントン症状評価システム(Edmonton Symptom Assessment System:ESAS)と呼ばれる、症状を「0:症状は全くない」~「10:最悪の症状」の11段階で評価するツールが用いられ、その平均値の推移がグラフ化されています(図5)。
図5 看取りまでの時期における症状の経時的変化
エドモントン症状評価システム(ESAS)を用いて各症状を11段階で評価した際の平均値の推移を示す。
文献2を参考に作成
この図を見ると、倦怠感や食欲不振、健康感、眠気、呼吸困難は、死期が近づくにつれて増悪し、特にお亡くなりになる1~2週間前からは急激に増悪する傾向にあることがわかります。一方で、疼痛、悪心、不安、抑うつは、死期が近づくにつれて少しずつ増悪していますが、急激な増悪には至らないようです。また、死亡1か月前には、悪心を除くすべての症状を中等度以上(ESASで4点以上)の強さで経験すると報告されています。このように見ていきますと、死期が近づくにつれてすべての症状が急激に増悪するわけではないことがわかります。
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