2019/5/8
2015年10月から始まった医療事故調査制度に基づき、日本医療安全調査機構は「医療事故調査・支援センター」として、医療の安全を確保し医療事故の再発防止を図ることを目的に活動している。同センターでは、報告された事故の事例を集積・分析し、重大事象が繰り返されないよう再発防止に向けた発信を行っている。
2015年10月~2018年9月末までに同センターに報告された院内調査結果報告書は817件で、そのうち8事例は人工呼吸器に関連した死亡事故であった。そこで、同センターでは「一般・療養病棟における非侵襲的陽圧換気(NPPV)及び気管切開下陽圧換気(TPPV)に係る死亡事例の分析」を発表した。
非侵襲的陽圧換気(NPPV)は、気管挿管や気管切開をすることなく、マスクを介して人工呼吸器による換気を行うものだ。一方、気管切開下陽圧換気(TPPV)は、気管切開孔から挿入した気管切開チューブを通じて人工呼吸器による換気を行う。
発生した死亡事故の8例は、自発呼吸がある患者に使用するNPPV使用中の5例とTPPV使用中の3例であった。同センターは、8事例を分析したうえで下記の5つの提言とポイントを示している。
■リスクの認識
提言1:NPPV/TPPVでも致命的となるリスクが伴うことを認識する
【ポイント】
一般・療養病棟で管理する人工呼吸器装着中の患者は、マスクと回路の接続外れなどのリスクが高まることを認識する。
■観察
提言2:人工呼吸器の作動確認に併せて呼吸状態の観察を行う
【ポイント】
患者の移動やケアの後など患者から離れる際には、「人工呼吸器(NPPV含む)使用時の安全確認」(以下の観察ポイント)を行うことが重要である。
■緊急対応
提言3:バッグバルブマスクなどを常備し、緊急時は直ちに用手換気に切り替える
【ポイント】
慢性呼吸不全や自発呼吸が十分でない患者の急変を予測して緊急蘇生用具の準備を行うことが大切である。
■教育
提言4:リスク予測や緊急時対応ができる実践力の維持・向上を図る
【ポイント】
人工呼吸器装着中の患者を担当する医療従事者は、緊急時に対応できる能力やリスクを予測して行動できる実践力を身につける必要がある。
■安全管理体制と機器管理
提言5:多職種連携による情報共有と対応
【ポイント】
人工呼吸管理を安全に行うためには、医師や臨床工学技士、看護師など多職種のスタッフが連携しコミュニケーションを図ることが重要である。
詳しくは、下記の日本医療安全調査機構Webサイト参照
http://www.medsafe.or.jp/modules/advocacy/index.php?content_id=1
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