2020/8/12
梅雨から盛夏にかけてのシーズンは、熱中症のリスクが一気に高まる時期と言われる。東京消防庁がまとめた令和元年の熱中症による救急搬送状況(※1)をみると、例年、梅雨が明けた頃から救急搬送人員は急増した。また、全体の救急搬送人員のうち約53.3%が65歳以上の高齢者であり、熱中症の発生場所としては「住宅等居住場所」となる屋内が全体の40.2%と、最も多かった。年齢区分別による発生場所でも、65歳以上の高齢者では「住宅等居住場所」が多い結果となっていた。
令和2年は、まだ収束のきざしが見えない新型コロナウイルスの感染予防対策のため、自宅で過ごすなど、マスクを着用したまま屋外に出ることによる、高齢者の熱中症のリスクがいっそう高まっているようだ。
本サイトの特集では、日本救急医学会等のワーキンググループが出した「新型コロナウイルス感染症の流行を踏まえた熱中症予防に関する提言」(『新しい生活様式』下における熱中症予防に関する学術団体からのコンセンサス・ステートメントを紹介したが、このような中で、国立長寿医療研究センターでは、感染症の予防と熱中症の予防を両立させるために、知っておくべきことをまとめた「高齢者のための熱中症対策ハンドブック」を発表した。
当ハンドブックでは、例えば、屋内で過ごす場合の熱中症予防策として、①換気とエアコンの適切な使用、②温度計の設置、③室内ではマスクは不要、などと示されている。特に、マスクについては、着用することで顔面の温度が上昇し、呼吸のしづらさから、身体への負担も大きくなる。自宅で家族のみと過ごす場合であれば、負荷を避けるためにも、原則マスク着用の必要はないと明記されている。また、マスクを外した際の手指衛生も行うようにと記載されている。屋外での熱中症予防でも、直射日光や輻射日光を避けることに加え、適宜マスクを外すことを推奨している。
ハンドブックでは、他に熱中症の危険度を示す「暑さ指数(熱中症指数)」、WBGT(Wet Bulb Globe Temperature)についてもていねいに解説されている。この指数によって、危険度を把握し、活動の目安や注意事項を知ることができる。
また、水分摂取の方法や運動への取り組み、社会的孤立の予防、体調管理の方法、認知症の人を介護する人に向けた項目などもあり、充実した内容となっている。大きな文字で読みやすいことも特徴である。
新しい生活様式のなかで高齢者を熱中症にさせない取り組みにおいて、このハンドブックは大いに活用できるものと思われる。
詳しくは、国立長寿医療研究センターWebサイト「新型コロナウイルス感染症対策下における高齢者のための熱中症対策 ハンドブック」参照
※1:東京消防庁:夏本番前から熱中症予防対策を!!(令和元年の熱中症による救急搬送状況の概要)
https://www.tfd.metro.tokyo.lg.jp/lfe/topics/202005/heat.html
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