2020/10/14
近年、身体機能や認知機能の低下を指すフレイルの概念が広まりつつあり、国や自治体は健康寿命の延伸のためにフレイルの予防をめざしている。さまざまな施策も立てられているが、これらを効果的に実施・評価するためには、そもそもフレイルに該当する対象者がどの程度いるのかを把握することが重要である。
これまでにも、いくつかの特定地域での高齢者のフレイル該当者割合は調査されてきたが、今回、東京都健康長寿医療センター研究所の調査研究によって初めて「地域在住日本人高齢者全体のフレイル割合」が明らかになった。
本研究では、フレイルの指標として使用されているFriedらの指標を用い、65歳以上の高齢者2,206名のデータをもとに「フレイル」「プレフレイル(フレイルの前駆状態)」「健常」に分類し、性別や年齢の偏りを調整してフレイル割合を算出している。
その結果、8.7%がフレイルに該当することが明らかとなった。この割合は、諸外国と比較して低いものであると述べられている。また、プレフレイルは40.8%、健常は50.5%となり、65歳以上の高齢者では約半数がフレイルあるいはプレフレイルに該当するとみられた。
研究チームによると、「女性」「高齢」「社会経済的状態が低い」「健康状態が悪い」ほど、フレイル割合が高い傾向があると報告されている。
さらに、地域ブロック別のフレイル割合についても報告されており、おおむね、西日本ではフレイル割合が高く、東日本では低い傾向がみられた(表参照)。
■地域ブロック別のフレイル割合
地域 | フレイル | プレフレイル | 健常 |
---|---|---|---|
北海道・東北 | 5.7% | 50.2% | 44.1% |
関東 | 8.0% | 39.7% | 52.3% |
中部 | 8.0% | 42.6% | 49.5% |
近畿 | 9.8% | 40.9% | 49.3% |
中国・四国 | 8.4% | 37.8% | 53.8% |
九州・沖縄 | 10.7% | 38.3% | 51.0% |
(東京都健康長寿医療センター研究所)
今回初めて、日本人高齢者全体のフレイル割合が明らかになったことは、フレイル予防に関する施策の評価や、フレイルに関する学術研究のマイルストーン(基準値・目標値)になる知見である。研究チームは、性別、年齢、社会経済的状態といった個人特性に加え、地域ブロックによるフレイル割合の違いを「見える化」したことで、健康格差の是正の必要性をあらためて訴える研究であると述べている。
詳しくは、東京都健康長寿医療センターWebサイト(2020年9月3日<プレスリリース>「日本人高齢者全体のフレイル割合は8.7%」参照。
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