2021/6/22
国立循環器病研究センター健診部、新潟大学大学院医歯学総合研究科、大阪大学大学院歯学研究科からなる共同研究チームは、無作為に抽出した都市部一般住民(*1)を対象に解析した研究で、咀嚼機能の客観的な評価項目の1つである最大咬合力が、循環器病発症に影響を及ぼすことを明らかにした(*2)。
歯科と循環器病の関連については、歯周病による影響が多く報告されているところではあるが、咀嚼機能の低下による栄養摂取の偏りを介した経路もあると考えられてきた。しかし、咀嚼機能自体との関連についてはほとんど報告がなく、この現状に対して、本研究は1つのエビデンスを示したことになる。
研究方法は次のとおりだ。
50~79歳の一般住民のうち、2008年6月11日から2013年6月12日までの間に歯科検診を受診した1,547名(男性652名、女性895名)を対象に、循環器病の新規発症が追跡された。最大咬合力の測定には、専用のシートを咬合させて測定する方法が用いられた。
その結果、最大咬合力が低い対象者は、高い対象者に比べ、循環器病の新規発症が多いことが明らかになったという。
咀嚼機能が低いと、将来的な循環器病発症のリスクとなる可能性が示されたことを受けて、同センターでは、「歯科治療による歯周病の予防に加え、咀嚼機能の低下を予防することが、動脈硬化性疾患予防の新たな戦略になる」とし、そのためにも、「医科歯科連携のもと、さらなるエビデンスを構築して行くことが今後の課題」としている。
詳しくは、国立循環器病研究センターWebサイト「2021年4月21日〈プレリリース〉都市部地域住民における咀嚼機能と循環器病発症との関連について」参照。
(*1)“吹田研究”参加者をいう。吹田研究とは、国立循環器病研究センターが1989年より実施しているコホート研究(研究対象者の健康状態を長期間追跡し、病気になる要因等を解析する研究手法)のこと。本研究の対象は、大阪府吹田市民を性年代階層別に無作為に抽出した吹田市民である。
(*2)本研究の成果は、2021年4月11日に国際誌「Scientific Reports」に掲載された。
論文タイトル:
Sakae Hashimoto, Takayuki Kosaka, Michikazu Nakai, et al: A lower maximum bite force is a risk factor for developing cardiovascular disease: the Suita study. Sci Rep 2021; 11(1): 7671.
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