2021/7/6
2021年6月11日、日本老年医学会と全国老人保健施設協会は合同で「介護施設内での転倒に関するステートメント」を発表した。本ステートメントは、日本老年医学会の「老年症候群の観点から見た転倒予防とその限界に関する検討ワーキンググループ」における検討を踏まえたものである。介護施設の医療介護従事者・管理者と関係する行政を対象に作成され、事故として扱われることの多い介護施設における転倒を老年症候群(高齢期に多く認められる転倒、尿失禁、褥瘡、せん妄など多彩な症候の総称)の1つとして捉え、転倒のすべてが過失による事故ではないことなどについてまとめられている。
ステートメントは次の4つである。
<ステートメント1>【転倒すべてが過失による事故ではない】
<ステートメント2>【ケアやリハビリテーションは原則として継続する】
<ステートメント3>【転倒についてあらかじめ入所者・家族の理解を得る】
<ステートメント4>【転倒予防策と発生時対策を講じ、その定期的な見直しを図る】
これらは、転倒やそれに伴う傷害に関して、防止しようとする施設の姿勢や取り組みと、発生した事故を状況に応じて受容する入所者、家族、ひいては国民全体の心象などを、把握しうる範囲で科学的に検討されている。具体的には、<ステートメント1>について、転倒予防策を実施していたとしても、転倒は一定の確率で発生するため、転倒の結果として骨折や外傷が生じても、必ずしも医療・介護現場の過失による事故とは位置づけられないこと。<ステートメント2>について、生活機能を維持・改善するためのケアやリハビリテーションは、それに伴う活動性が高まることで転倒リスクを高める可能性があるが、入所者の生活の質の維持・向上が期待されるため原則として継続すること。<ステートメント3>について、転倒は老年症候群の1つであることを関係者で共有することが望ましいこと。<ステートメント4>について、施設は転倒予防策に加えて転倒発生時の適切な対応手順を整備し、職員に周知するとともに、入所者やその家族などの関係者にあらかじめ説明するべきであること、といった内容が盛り込まれた。これらのステートメントと合わせて、根拠となる全文もぜひ一読されたい。
なお、広く国民に理解を求めることを目的に「介護施設内での転倒を知っていただくために 国民の皆様へのメッセージ」も作成され、同時公開されている。
詳しくは、下記の各Webサイト参照
・日本老年医学会
https://www.jpn-geriat-soc.or.jp/info/important_info/20210611_01.html
・公益社団法人 全国老人保健施設協会
https://www.roken.or.jp/archives/25431
【関連ページ】
●特集:転倒リスクに気づき、転倒を予防する
×close
©DEARCARE Co., Ltd.