2022/12/1
高齢者の増加に伴い、わが国は多死社会を迎えようとしている。療養の場が病院から地域の施設や在宅へと移っていくなか、人生の最期をどこでどのように迎えるかが大きな課題となっている。
近年ではアドバンス・ケア・プランニング(Advance Care Planning:ACP)の重要性も広まりつつあり、事前の話し合いから、「暮らし慣れた場で自分らしく最期を迎えたい」「無理な延命措置はとらないでほしい」といった患者や家族の希望があれば、それに沿った看取りができるようなサポートが求められる。2006年度の介護報酬改定において「看取り介護加算」が新設され、施設における看取りにインセンティブがつくようになった。その後も定期的に見直しが進められ、国として介護サービス従事者が行う看取りを後押ししている。
東京都健康長寿医療センターの研究チームは、神奈川県の特別養護老人ホーム8施設の常勤介護職員を対象に調査を行い、看取りケアに対する意思を“看取りケアに積極的に関わりたいと思いますか?”という設問によって評価した(*1)。
対象とした245名中、分析可能なデータとして得られた187件を分析した結果、76.4%が看取りケアに積極的な態度をもち、23.6%が消極的な態度をもっていることがわかった。
看取りケアに積極的に関わりたいと思う理由としては、「自分を成長させてくれるから」「生死に関わることは尊い営みであるから」「入所者の人生と深く関わることができるから」などが挙げられた。
一方、積極的に関わりたいと思わない理由としては、「もっと何かできたのではないかと後悔するから」「うまく看取り介護ができるか自信がないから」「人が亡くなるところを見たくないから」「看取り介護にむなしさを感じるから」などが挙げられた。
また、本調査では、過去1年間に入所者から「死にたい」、あるいは「死にたくない、死ぬのが怖い」と言われたことがあるかどうか、といった質問も行われており、81.2%の人が、入所者から「死にたい」と言われたことがある、と回答した。
施設入所者の高齢化が進み、医療依存度の高い入所者も増えるなか、より「死」が身近なこととなり、看取りケアに積極的な意識をもつ介護職員も増えてきている。一方、地域や施設規模によっては、まだまだ看取りケアの経験や知識が十分ではない場合も多くあり、不安や葛藤、無力感を感じている職員も多いことだろう。
2040年には、年間当たりの死亡数が約168万人(1日当たり約4,600人)にのぼると見込まれており、これは1989年の年間死亡数、約79万人の2倍を超える水準である(*2)。今後、施設における看取りへのニーズがますます高まるなか、職員の不安を払拭し、精神的負担をフォローできるよう、施設としての指針を示したうえ、多職種で知識やスキルを共有し、教育に取り組んでいくことが求められる。
各自治体や社会福祉協議会が定期的に看取りに関する研修を行っているほか、日本看護協会からは「介護施設等における看取り研修プログラム(*3)」が提案されている。ぜひ参考にされたい。
【文献】
*1 東京都健康長寿医療センター研究所Webサイト 2022年11月1日<研究トピックス>「介護職員が看取りをすることに関する調査研究~入所者に「死にたい」「死ぬのが怖い」と言われたら~」
*2 令和2年版厚生労働白書-令和時代の社会保障と働き方を考える-https://www.mhlw.go.jp/stf/wp/hakusyo/kousei/19/index.html
*3 日本看護協会が提案する介護施設等における看取り研修プログラムhttps://www.nurse.or.jp/home/publication/pdf/fukyukeihatsu/mitori_program.pdf
【関連ページ】
●令和3年度(2021年度)介護報酬改定で新しくなったこと~介護現場で働くスタッフが知っておきたいポイント~
https://www.almediaweb.jp/expert/feature/2107/
●「ディアケア プレミアム」
在宅でも施設でも必要なエンゼルケアの技術(実践ケア動画)
https://dearcare.almediaweb.jp/home/cat13/theme001/index.html
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