2023/9/19
高齢化が進む近年、“健康寿命”をいかに延伸できるかが喫緊の課題である。要介護状態となった方が再び元の健康な状態まで回復することは大変難しく、軽度の要介護状態である“要支援”の段階から、要介護度ができるだけ重症化しないよう支援することが大切だ。
同研究グループでは、すでに先行研究で、高齢心不全患者の入院中のWRFが退院時の日常生活動作(ADL)の低下の要因であることを明らかにしていたが、WRFの重症度と低身体機能との関連についてはわかっていなかった。そこで、今回、WRFの重症度に着目し、退院時低身体機能との関連性について調査が行われた。大阪公立大学看護学研究科の研究グループは、要支援に新規認定された高齢者が、介護保険サービス(通所系サービス、訪問介護サービス)を利用することでフレイルの発生が抑えられるのかを明らかにすることを目的に、調査を実施した。
本研究で対象としたのは、2012年9月から2013年3月の期間中に、大阪府下の三自治体において要支援1や2に新規認定を受けた高齢者のうち、非フレイルおよびプレフレイルであった655名。調査には、南大阪医療介護(SOHA)スタディの2012年4月~2017年3月の介護報酬および診療報酬データを使い、介護報酬から毎月の通所系サービスと訪問介護サービスの利用状況を、診療報酬からはICD-10による指標にてフレイルの程度を測定した。
認定後5年間のフレイル発生率を調査したところ、対象の33.9%にあたる222名に、フレイルの発生がみられた。さらに、時間依存性コックス回帰モデル解析の結果、通所系サービスの利用者は、非利用者に比べてフレイルを発生するリスクが40%低減していたことが明らかになった。
5年間のうちには、通所系サービスの利用者・非利用者ともにフレイルとなる方はいるものの、通所系サービスの利用者のほうが、非利用者に比べて常にフレイルの発生率が低い結果となった。
以上の研究成果から、要支援高齢者が通所系サービスを利用することによる、フレイル発生リスクの低減効果が明らかとなった。
今回の結果は、高齢者が要支援1や2に認定された時点で、通所系サービスの利用や、通所系サービスに相当する外出を本人や家族に勧めることが大切であることを示唆している。同研究グループは、感染予防対策とバランスをとりながら、高齢者の通所や外出を促す環境づくり、高齢者・家族への適切な意識づくりを働きかけていくことが重要である、と結んでいる。
心身の機能が低下してきたり、支援が必要になってくると、なかなか外に出たがらず家に閉じこもりがちになる高齢者も多いだろう。また、通所系サービスの必要性を感じていなかったり、新しい環境に抵抗があったりなどの理由で、サービス利用に消極的な場合もある。
定期通院などの際に看護師から本人にサービス利用や外出を勧めてみたり、ご家族の話も聞いてみるなど、うまく支援につなげられるような声かけを意識したい。
詳しくは、大阪公立大学Webサイト(2023年7月27日<プレスリリース>「5年以内のフレイル発生リスクが40%低減! “要支援”高齢者の通所系サービス利用効果を実証」)参照
https://www.omu.ac.jp/info/research_news/entry-07166.html
【関連ページ】
●筋力低下に対する運動療法
https://www.almediaweb.jp/motorsystem/exercise-therapy/
●「ディアケア プレミアム」
筋力低下に対する運動療法(実践ケア動画)
https://dearcare.almediaweb.jp/home/cat02/theme001/index.html
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