2024/11/26
日本老年看護学会は、「急性期病院における高齢者のフレイル予防・回復に向けた看護」への提言を発表した。
高齢化社会において、健康寿命の維持・延伸はますます重要になっている。そのなかで大切な要素の1つがフレイルの予防だ。フレイルは、加齢に伴う虚弱状態のことを指し、健康な状態と要介護状態の中間の段階を指すと言われている。要介護状態に陥る前に介入することで、再び健康な状態へと回復できる可能性がある。
心身が脆弱な状態にあると、何かアクシデントが生じた際、元の健康な状態まで回復することが困難なことがある。元気に過ごしているように見える高齢者が、入院などをきっかけにADLが一気に低下し、寝たきりとなってしまうことも珍しくない。
入院中は生活環境が大きく変わり、また、入院の原因となった疾患やけがなどによる苦痛も伴うことで、心身に大きな影響がある。それによって食欲や意欲が低下し、身体機能や認知機能の低下、活動性の減少、さらなる意欲低下といった悪循環に陥りやすい。このようなサイクルを断たなければ、容易に介護が必要な状態まで進行し、入院前の生活に戻ることは難しくなる。急性期のを患者をみる急性期病院には、入院してきた高齢患者が元の生活に復帰できるよう、フレイルの予防・回復に向けた看護が求められる。
フレイルは、身体・心理・社会的側面を含めた包括的な概念であり、対象者を多面的に捉えた看護実践が欠かせない。治療を主に行う急性期病院においては、入院日数の短縮化や治療の高度化が進むなかで、フレイルへの支援は看過されやすい課題である。そこで、入院時の状態を把握し、フレイルの予防・回復を念頭に置いたケアにつながるよう、日本老年看護学会から以下の4つの提言がなされた。うち、提言1には7つの観点が設けられている。本提言の詳細版には、各提言について具体的な働きかけの例として、入院前の情報取得や環境整備の具体例、本人や家族とのコミュニケーションなども多数紹介されているため、ぜひ参考にされたい。
提言1
入院中生じやすい高齢者のフレイルの予防・回復のための看護を意図的・計画的に実践するために、以下を推進します。
・提言 1-1:入院時に高齢者のフレイル状態(身体、心理、社会面)を把握し、治療・回復への影響をアセスメントして看護計画に活用すること
・提言 1-2:高齢者の安全を考慮しつつ、活動性(ADL)の維持・拡大を図ること
・提言 1-3:高齢者が生きることへの意欲を低下しないように、意欲を呼び起こす働きかけを行うこと
・提言 1-4:高齢者の栄養状態を維持・向上するための働きかけを行うこと
・提言 1-5:高齢者の全人的苦痛を取り除くケア・心地よさを味わえるケアを積極的に取り入れること
・提言 1-6:高齢者とのコミュニケーションを活性化する努力を続けること
・提言 1-7:高齢者に行った看護について、フレイルの予防・回復への貢献を評価すること
提言2
入院中にフレイルを進める要因となる身体拘束の低減、および身体拘束に伴う合併症の予防に向けた働きかけを推進します。
提言3
高齢者のフレイルの予防・回復を念頭においた医療・ケアを、本人と家族および多職種と協働し、入院前、入院中、退院後も継続して実施することを推進します。
提言4
急性期病院における高齢者のフレイル予防・回復に向けた看護を探求することを推進します。
詳しくは、下記の日本老年看護学会Webサイトを参照
急性期病院における高齢者のフレイル予防・回復に向けた看護」への提言
https://www.rounenkango.com/houkoku/frail.html
【関連ページ】
●筋力低下に対する運動療法
https://www.almediaweb.jp/motorsystem/exercise-therapy/
●「ディアケア プレミアム」
筋力低下に対する運動療法
https://dearcare.almediaweb.jp/home/cat02/theme001/
●「ディアケア プレミアム」
ADLのアセスメント:バーセルインデックス(BI)
https://dearcare.almediaweb.jp/home/cat01/theme013/index.html
●「ディアケア プレミアム」
生活動作の介助技術:リハビリテーションの視点から
https://dearcare.almediaweb.jp/home/cat01/theme011/index.html
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