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2018/6/13

褥瘡治癒のカギを握る「栄養」(特に「亜鉛」)の重要性

褥瘡の治癒促進に栄養が果たす役割については、臨床現場では常に認識されているようだが、なかなか文献的に明確なエビデンスは示されていない。日本褥瘡学会の『褥瘡予防・管理ガイドライン(第4版)』では、「CQ4.2 低栄養患者の褥瘡予防にはどのような栄養介入を行うとよいか」に対して、「蛋白質・エネルギー低栄養状態(PEM)の患者に対して、疾患を考慮したうえで、高エネルギー、高蛋白質のサプリメントによる補給を行うことが勧められる。(推奨度B)」としている1。また、特定の栄養素に関しては、「CQ4.10-A」として、「亜鉛、アスコルビン酸、アルギニン、L-カルノシン、n-3系脂肪酸、コラーゲン加水分解物など疾患を考慮したうえで補給してもよい。(推奨度C1)」としている。

亜鉛に関しては、核酸や体蛋白の合成、味覚・免疫機能の維持、各細胞や組織の代謝促進に必要な栄養素であることは明記され、「皮膚の新陳代謝に作用し、創傷の修復を促進する作用がある」と記されている。アルギニンに関しては、蛋白質、コラーゲンの合成促進、血管拡張作用、免疫細胞の賦活化などの作用がある」としている。コラーゲン加水分解物はコラーゲン合成を促進する作用があり、コラーゲン加水分解物の補給によって褥瘡が促進したという報告があると記されている。

『日経メディカル』(日経BP社発行)2018年3月号の「褥瘡治療の決め手は『亜鉛』にあった」という記事では、高岡駅南クリニックの塚田邦夫院長が、「栄養は患者の自主的取り組みが必要なためそう簡単にはいかないのが課題」と述べている。そこで塚田院長は、通常の食事による栄養摂取が難しい高齢者には栄養補助食品や経腸栄養剤を積極的に用いているという2

日本静脈経腸栄養学会の『静脈経腸栄養ガイドライン(第3版)』でも、褥瘡治癒と栄養について高いレベルの推奨を行っている。「Q1低栄養は褥瘡の危険因子か?」のCQに対して、「低栄養は褥瘡の危険因子であるため、適切な栄養管理は褥瘡の予防に有効である。(推奨度AⅡ)」としている。「適切な栄養管理」とは、「定期的な栄養スクリーニングの実施、スクリーニングで抽出された患者に対する栄養アセスメント、アセスメント結果に応じた栄養療法の実施のこと」である。さらに、「適切な栄養管理を実施したうえで、アルギニン、ビタミンC、亜鉛などを強化した栄養補助食品を付加する栄養療法は、褥瘡治療の一つの手段として推奨される。(推奨度BⅡ)」とされている。特に、「亜鉛は肉芽形成や創部の再上皮化に関連するため、創傷治癒に重要な役割を果たす」と明記されている3

日経メディカルの記事でも紹介されている“コラーゲンペプチド”は、コラーゲン成分としてだけでなく、創傷部位における線維芽細胞を直接刺激し、増殖を促進することがわかってきたという2。大阪府の若草第一病院の山中英治院長は、多施設ランダム化試験(RCT)の結果を発表している。このRCTでは、必要十分量のエネルギーと蛋白質が摂取できている褥瘡患者を対象としてコラーゲンペプチド10gを含有する飲料を1日1本、経管もしくは経口投与した群と非投与群、アルギニン含有飲料群とを比較検討したという。指標となったのは、DESIGN-Rの点数の推移だ。その結果、コラーゲンペプチド含有飲料摂取群では、非投与群と比較して、摂取2週間以降、および最終スコアで有意に低値になったという。このことから、コラーゲンペプチド摂取による独自の機序を介した褥瘡治癒促進効果があると考えられている4

褥瘡と栄養の問題は、古くて新しい問題の一つだが、臨床現場から新たなエビデンスが生まれつつあるようだ。

文献

  • 1日本褥瘡学会:褥瘡予防・管理ガイドライン(第4版).2015.
  • 2褥瘡の決め手は「亜鉛」にあった.日経メディカル2018;47(3):18-19.
  • 3日本静脈経腸栄養学会:静脈経腸栄養ガイドライン 第3版.照林社,東京,2013:352-357.
  • 4山中英治:創傷治癒のプラスアルファになる栄養素コラーゲンペプチドの働き.進化を続ける! 褥瘡・創傷治療・ケア アップデート,照林社,東京:178-182.
  • ※この記事内容は公開当時の情報です。ご留意ください。

【関連ページ】

●最新ガイドライン、DESIGN-R®2020に基づく 新 まるわかり褥瘡ケア

https://www.almediaweb.jp/pressureulcer/maruwakari/

●ナースが知っておきたい栄養の基本と栄養サポートの進め方

https://www.almediaweb.jp/nutrition/

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