2023/1/19
血管留置針の接続部に潰瘍ができていた、在宅酸素療法中の患者で酸素カニューレがいつも接触している部分から血が出ていた、など、医療関連機器使用中に生じる創傷は、病棟・施設・在宅を問わずにみられる。これらは、医療関連機器圧迫創傷(Medical Device Related Pressure Ulcer:MDRPU)と呼ばれ、発生要因はケア要因・危機要因・個体要因があるとされている。
MDRPUの発生事例は繰り返し報告されており、日本医療機能評価機構によると、2018年1月1日~2022年9月30日の集計期間で、80件の報告があった。原因として多かったものは、シーネ(12件)、血管留置針(12件)、NPPV用マスク(10件)などが挙げられており、その他にも気管切開チューブや胃管・イレウス管、弾性ストッキング、身体拘束に用いられるミトンなどが報告されていた。
また、在宅におけるMDRPUの発生状況については、2019年に訪問看護ステーションで実態調査を行った研究報告がある(*2)。全国1000施設への質問紙調査から252症例の回答が得られ、尿道留置カテーテル38件、経ろう医療チューブ56件、経鼻酸素カニューレ30件の医療機器が関連していた。いずれも在宅の場ではよく目にする医療機器であり、好発例や好発部位を把握しておくことで、MDRPUの予防や早期発見につながる。
医療者は、医療関連機器による圧迫に伴い、血流障害や組織壊死などが生じる可能性があることを周知し、定期的に皮膚の観察を実施する必要がある。長期の床上安静や低栄養、浮腫など、MDRPUの発症リスクが高いと考えられる患者には特に注意が必要だ。
日ごろから使用されている身近な器具が発生要因となることを改めて意識し、必要に応じて速やかに皮膚科医や皮膚・排泄ケア認定看護師と連携して対処に当たることを心がけたい。
【出典】
(*1)日本医療機能評価機構 医療安全情報Np.192「医療関連機器による圧迫創傷」
https://www.med-safe.jp/pdf/med-safe_192.pdf
(*2)佐竹陽子,石澤美保子,森脇裕美,ほか:在宅における医療関連機器圧迫創傷(MDRPU)発生の実態調査.第28回日本創傷・オストミー・失禁管理学会学術集会(2019).
【関連ページ】
医療関連機器圧迫創傷(MDRPU)をどう防ぎ、どうケアするか
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