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ナースが知っておきたい 栄養の基本と栄養サポートの進め方
著・若草第一病院 院長 山中英治
2019年1月公開
Part1 栄養の基礎
2.必要なエネルギーと窒素
1) エネルギー
エネルギー必要量は年齢や体格と活動量によって違います。予測式としては、Harris-Benedictの式(図10)が用いられることが多いようです。ただし、この式はかなり昔につくられた式であり、当時の平均寿命はおおよそ50歳以下だったことからも、現代の高齢者には当てはまらないとされています。計算式も覚えにくいので、体重だけで計算する簡易式(25~30kcal/kg/日)のほうが現実的でしょう(図11)。
矢吹浩子編:ナースのために ナースが書いた ココが知りたい栄養ケア.照林社,東京,2016:8.
矢吹浩子編:ナースのために ナースが書いた ココが知りたい栄養ケア.照林社,東京,2016:8.
これらで求められたエネルギー必要量に合わせて、投与量を検討します。なお、肥満患者の場合、標準体重で計算しないと投与量が過剰になります。特に、寝たきりの高齢者への投与には、注意が必要です。
日本では、諸外国に比べて寝たきりの高齢者が異様に多いとされています。このような患者さんに経管栄養をしている場合、若い人や活動している人よりもエネルギー消費量がかなり少なくなります。そのため、体重からの計算式で栄養投与を続けると、動かないことで筋肉はどんどん衰える一方で、投与カロリーは過剰になって皮下脂肪だけが増えてしまいます。
動かないで体重だけが増えると、褥瘡のリスクも高まります。また、腹部の脂肪が増えると、PEG(Part3-2を参照)が腹壁にめり込んで合併症が起こる原因にもなります。現状では、このような人には1000kcal/日程度と、維持量より少ない量の栄養剤が投与されていることが多いです。そのため、長期になる場合は、電解質・ビタミン・微量元素の欠乏に注意する必要があります。
エネルギー消費量が多い病態では、計算式よりも必要エネルギー量が多いこともあります。逆に、消費量が少なければ必要量も少なくなりますので、1週間ごとをめやすに体重などを定期的にモニタリングしながら調整します。
エネルギーは主に糖質と脂質で投与します。糖質は1gで4kcal、脂質は9kcalのエネルギー源になります。糖質や脂質が不足しがちであれば、タンパク質もエネルギー源として利用されます。タンパク質1gは、4kcalのエネルギーになります。
最近では、糖質制限食というのが流行りです。糖質は血糖値を上げるので、糖尿病患者にはある程度制限したほうがよいと考えられます。しかし、エネルギー源を極端に脂質に偏った食事は、高脂質血症や食物繊維不足による便秘などの弊害も指摘されています。
2) 窒素
エネルギー源として糖質と脂質だけを摂取していても、骨格筋や内臓の筋肉、血漿タンパクなどの重要な身体構成成分をつくることができません。タンパク質やアミノ酸から摂取する窒素(N)を材料にして、エネルギーを使って身体をつくります。
タンパク質やアミノ酸6.25gに、窒素が1g含まれます。
食事から摂取されたタンパク質は、消化酵素でアミノ酸に消化されて、門脈経由で肝臓に運ばれ、肝臓で自分のタンパク質に合成されます。他人のアルブミン(アルブミン製剤輸液)を注射で投与した場合は、一時的に血中アルブミン濃度は上がるのですが、自分のアルブミンではではないので代謝されてしまいます。タンパク栄養障害を改善するためには、エネルギーと窒素を十分に摂取して、自分のタンパク質を合成するしかありません。
身体のタンパク質にも寿命があって、常に分解されていますが、同時に合成もされているので窒素平衡(バランス)が保たれています。消費が亢進する状況で供給とのバランスが崩れると、筋肉が分解されて痩せてしまいます。反対に、エネルギーと窒素をたくさん摂取して、筋肉トレーニングをすれば、筋肉が増強されます。
3) NPC/N比(非タンパクカロリー/窒素比)
非タンパクカロリー(糖質や脂質)(kcal)と、窒素(タンパク質やアミノ酸に含まれる)(g)を摂取する比率をNPC/N比といいます。タンパク合成に適した比率は、150前後とされています。窒素量はタンパク質の量(g)÷6.25で計算します。
矢吹浩子編:ナースのために ナースが書いた ココが知りたい栄養ケア.照林社,東京,2016:43.一部改変
侵襲時にはタンパク質の消費が大きいので、投与する窒素量を増やしたほうがよく、比率は低くなります。慢性腎不全などで腎機能が悪い場合はタンパク制限をするので比率を高くします。
市販の高カロリー輸液のキット製剤や経腸栄養剤は、NPC/N比が適切になるように調整されています。
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