ナースが知っておきたい 栄養の基本と栄養サポートの進め方

著・若草第一病院 院長 山中英治

Part1 栄養の基礎

1.栄養素の基礎知識

栄養素には、いわゆる三大栄養素(糖質・脂質・タンパク質)と、ビタミン、ミネラルなどがあります。

1) 糖質

糖質は炭素(C)、水素(H)、酸素(O)でできていて、炭水化物に多く含まれる基本的なエネルギー源です。糖質と食物繊維を総称して炭水化物と呼んでいます。

糖質の主な役割は、全身の細胞がはたらくためのエネルギーの供給です。糖質1gで4kcalのエネルギーが産生されます。糖質は、最小単位である「単糖」、単糖が2つくっついた「二糖類」、単糖がたくさんつながった「多糖類」に分けられます。輸液に入っている糖質は、たいていはブドウ糖(グルコース)です。ブドウ糖輸液はよく使いますので、ブドウ糖の分子式C6H12O6(分子量180)ぐらいは知っておきましょう。調味料の砂糖は、ブドウ糖と果糖(フルクトース)が結合したショ糖(スクロース)です。また、植物の種子や根に多く含まれるデンプンは、多数のα-グルコース分子がつながった多糖類です(図1)。摂取した糖質は、消化の過程で単糖(ブドウ糖や果糖)にまで分解されて、体内に吸収されます。

図1 糖質の構造(イメージ)
図1 糖質の分類の参照画像

血中のブドウ糖は、全身をめぐるなかで、インスリンのはたらきによって細胞内に取り込まれて、それぞれの細胞でエネルギー源として利用されます。血糖値は血中のブドウ糖の濃度です。糖質はエネルギー供給の基本となる栄養素ですが、摂取するとすぐに血糖値が上がるため、糖尿病では糖質の摂取量を制限します。

なお、サツマイモなどには、食物繊維のセルロースも多く含まれています。この食物繊維は消化酵素では分解できないためエネルギー源にはなりませんが、腸で水分を吸収し、便の量を増やしてちょうどよいやわらかさにするので、便秘予防になります。また、善玉菌の餌にもなるので、善玉菌が増えて腸の調子を整えます。

2) 脂質

脂質も、糖質と同じく主にエネルギーとして利用されます。産生されるエネルギー量は1gで9kcalと糖質に比べて多く、エネルギーを蓄えるのに適しています。

脂質は脂肪酸とアルコールでできています。なかでも、脂肪酸とグリセリン(アルコールの一種)が結合したものが脂肪です。中性脂肪は、グリセリンに脂肪酸が3個ついているのでトリグリセリドといい、天然の脂肪のほとんどは中性脂肪のかたちで存在します(図2)。

図2 中性脂肪の構造(イメージ)
図2 中性脂肪の構造(イメージ)の参照画像

脂肪酸とは、炭化水素鎖(アルキル基)に-COOH(カルボキシル基)がついたかたちで、炭素数6個以下を短鎖脂肪酸、8個~10個を中鎖脂肪酸、12個以上を長鎖脂肪酸と分類します(図3、4)。
脂肪酸のうち、炭素どうしの間に二重結合がないものが飽和脂肪酸、二重結合が1個でもあるものが不飽和脂肪酸です。二重結合が2個以上あるものは、多価不飽和脂肪酸と呼ばれます。不飽和脂肪酸が多い植物油などは常温で液体ですが、飽和脂肪酸が多い動物性脂肪(ラード、バターなど)は、常温で固体です。体内で合成することができない脂肪酸が必須脂肪酸で、リノール酸とα-リノレン酸です(図5)。

カルボキシル基の反対側のメチル基(-CH)から数えて6番目と7番目の炭素間に二重結合がある脂肪酸をn-6(ω6)系脂肪酸、3番目と4番目の炭素間に二重結合がある脂肪酸をn-3(ω3)系脂肪酸といいます。

図3 脂肪酸の構造(イメージ)
図3 脂肪酸の構造(イメージ)の参照画像
図4 脂肪酸の分類
図4 脂肪酸の分類の参照画像
図5 リノール酸とα-リノレン酸
図5 リノール酸とα-リノレン酸の参照画像

脂質をエネルギー源として利用する場合、摂取した際の血糖値の上昇は、糖質よりもゆるやかです。
また、脂質は呼吸不全の際の栄養素としても有用とされています。これは、以下に説明する「呼吸商」と関係しています。

生体内で栄養素をエネルギーに変換する際に、酸素を消費して二酸化炭素がつくられます。この、酸素消費量と二酸化炭素生産量(排出量)の比率を「呼吸商」といい、栄養素ごとに値が決まっています(表1)。

脂質の呼吸商は0.70で、糖質の1.00よりも低く、二酸化炭素の産生が少ないことがわかります。そのため、呼吸不全の際の栄養素として、糖質よりも有利とされているのです。

表1 呼吸商
表1 呼吸商の参照画像

また、脂質は効率的なエネルギー源である他に、ステロイドホルモンや細胞膜の構成成分としても重要です。必須脂肪酸が欠乏すると、皮膚がカサカサになる鱗屑状の皮膚炎、創傷治癒遅延、小児では発育障害などが起こります。

3) タンパク質

タンパク質は糖質と同じく1gで4kcalのエネルギーになりますが、エネルギー源としてよりも、血漿タンパクや、内臓、筋肉などの身体構成成分として重要です。タンパク質はアミノ酸からできています。アミノ酸がいくつか結合したものがペプチドで、ペプチドがつながったものがポリペプチドです。ポリペプチドが3次元的に複雑に結合したものがタンパク質です(図6)。

アミノ酸は、炭素(C)を中心として、アミノ基(-NH2)とカルボキシル基(-COOH)がついた形です。炭素につく側鎖(R)によって種類が分けられます。自然界には約500種類のアミノ酸がありますが、体タンパクをつくるアミノ酸は、表2に示した20種類です。このうち、体内で合成することができないものが必須アミノ酸(表2中、をつけた9種)であり、栄養として体外から摂取する必要があります。

図6 アミノ酸とタンパク質の構造(イメージ)
図6 アミノ酸とタンパク質の構造(イメージ)の参照画像
表2 アミノ酸の分類
表2 アミノ酸の分類の参照画像

矢吹浩子編:ナースのために ナースが書いた ココが知りたい栄養ケア.照林社,東京,2016:48.一部改変

タンパク質が不足すると、骨格筋が分解されてアミノ酸となり、エネルギー源や血漿タンパク合成のために消費されます。さらに不足すると低タンパク血症になり、免疫抗体などのタンパク質も低下して感染症にも罹患しやすくなり、タンパク栄養障害から死の危険に至ることもあります。

身体をつくる原料になるタンパク質(アミノ酸)と、身体をつくるために必要なエネルギーの糖質や脂質を、バランスよく十分に摂取することで、消耗することなく身体が生き続けることができます(表3)。

表3 三大栄養素の主な役割
表3 三大栄養素の主な役割の参照画像

4) ビタミン

ビタミンは生命維持の代謝に必須の酵素複合体の成分で、有機物(炭素を含む物質)の栄養素です。ビタミンには水溶性ビタミンと脂溶性ビタミンがあります。水溶性ビタミンは水に溶け、過剰に摂取しても簡単に排泄される半面、体内に貯蔵できないので欠乏症に注意が必要で、常に必要量を摂取しなければなりません。脂溶性ビタミンは、水に溶けずに脂肪に溶け、肝臓などに貯蔵できるので、欠乏症になりにくいですが過剰症になることがあります。

水溶性ビタミンは三大栄養素の代謝に重要なはたらきをしています。脂溶性ビタミンは生体内の特異的な作用に関与しています。

①水溶性ビタミン

水溶性ビタミンを以下に示します。なかでも最も重要なビタミンは、ビタミンBとビタミンCです。これらは体内で合成できません。

ビタミンの参照画像
【ビタミンB

ビタミンB(チアミン)は、糖質の代謝に中心的役割を果たしています。他にも中枢神経や末梢神経を正常に保つはたらきもしていて、とても大切なビタミンです。体内蓄積量が少なく代謝も速いので、欠乏症になりやすいです。

グルコースからエネルギーを産生する過程で、ピルビン酸からアセチルCoAに代謝するのに、ビタミンBが補酵素として必要です。ビタミンBが欠乏すると、ピルビン酸がアセチルCoAになれずに乳酸に変換されます。乳酸が蓄積すると、乳酸アシドーシスという危険な病態になります(図7)。

図7 ビタミンB1欠乏による影響
図7 ビタミンB1欠乏による影響の参照画像

矢吹浩子編:ナースのために ナースが書いた ココが知りたい栄養ケア.照林社,東京,2016:40.を元に作成

江戸時代から明治時代まで、日本では脚気(かっけ)が重大な病気として多くみられました。脚気はビタミンB欠乏で生じ、末梢神経障害と心不全(脚気心)をきたします。末梢神経障害で、手足のしびれ、下肢の脱力と知覚鈍麻、歩行障害が起こり、膝蓋腱反射が低下・消失します。内科の外来に打腱器というハンマーが置いてあるのは、昔は脚気の患者が多かったからでしょう。
末梢血管抵抗減少による脚気心では、死に至ることも多かったようです。江戸時代には、上流社会でビタミンBが豊富な米ぬかの部分を削ぎ落して白米を食べるようになり、御姫様などが脚気で亡くなりました。また、明治時代には、陸軍では森鴎外陸軍軍医総監の意向で白米食に固執したため脚気で死ぬ兵隊が多かった一方で、海軍では高木兼寛(東京慈恵医科大学の創始者)軍医総監が、ビタミンとタンパク質の豊富な洋食+麦飯を推進したことによって脚気が激減したのは有名な話です。

ビタミンB欠乏による中枢神経障害には、アルコール依存症に多いウェルニッケ脳症があり、運動失調や意識障害をきたします。多量に飲酒すると、アルコールを分解するのに通常の過程だけでは追いつかずに、ビタミンBを多く消費する系でも分解されるからです(図8)。

図8 アルコールの代謝経路
図8 アルコールの代謝経路の参照画像

https://takeda-kenko.jp/yakuhou/backnumber/pdf/vol473_01.pdfを元に作成

【ビタミンC】

ビタミンCは、柑橘類などの果物や野菜に多く含まれます。抗酸化物質としてサプリメントや医薬品にも応用されています。コラーゲン合成に必要であり、欠乏すると血管壁のコラーゲン合成障害で血管が破綻して、皮下・粘膜出血を生じます。血管以外にも支持組織が弱くなり、歯肉出血と腫脹、歯が抜ける、創傷治癒遅延、免疫能低下などが起こる壊血病(血管が壊れるという意味か)という病気になります。

新鮮な野菜や果物が豊富にある近世の日本で壊血病をみることは稀ですが、昔のあまり寄港しない長期航海の乗組員などでは問題となった病気です。壊血病予防のために、イギリス海軍ではレモンやライムを、ドイツ海軍ではザワークラウト(キャベツの発酵食品)を航海食に取り入れていました。

現代でもジャンクフードばかり食べていると発症のリスクはあります。ビタミンCが欠乏すると、傷の治りが悪い以外にも、鉄の吸収も悪くなり貧血の原因にもなります。

【その他の水溶性ビタミン】

ビタミンB2は主に皮膚や粘膜の健康を維持するはたらきがあり、欠乏すると成長障害や、口角炎、皮膚炎などが起こります。

ビタミンB6はアミノ酸代謝の補酵素としてはたらきます。腸内細菌によっても合成されるので欠乏症は稀ですが、口内炎、皮膚炎、精神症状などがあります。

ビタミンB12と葉酸はDNA合成や造血に関与します。欠乏すると造血障害が生じて、大球性貧血になります。ビタミンB12欠乏では四肢のしびれや知覚・歩行障害などの末梢神経障害も現れます。

ナイアシンが欠乏するとペラグラという皮膚炎や成長障害が起こります。
パントテン酸とビオチンの欠乏症は稀です。

主な水溶性ビタミンとその特徴を表4にまとめます。

表4 主な水溶性ビタミンと特徴
表4 主な水溶性ビタミンと特徴の参照画像
②脂溶性ビタミン

脂溶性ビタミンには、ビタミンA、ビタミンD、ビタミンE、ビタミンKがあります(表5)。

【ビタミンA】

ビタミンAは、レバー、うなぎなどの動物性食品や、かぼちゃ、人参などの緑黄色野菜に多く含まれています。活性型ビタミンAにレチノールという名前があるように(網膜は英語でretina)、視細胞で重要なはたらきをしていて、発展途上国では欠乏症での夜盲症が問題になっています。急性前骨髄性白血病の治療薬でもあります。

【ビタミンD】

ビタミンDは、カルシウムの小腸での吸収を促進させます。食物から摂取したビタミンDは、日光の紫外線を浴びることで生合成されます。あまり紫外線対策をしすぎるとビタミンD不足になり、骨の発育障害のくる病や、骨粗しょう症での骨折のリスクが高まります。

【ビタミンE】

ビタミンEは、ビタミンCなどとともに抗酸化作用をもつビタミンです。 細胞膜に発生する活性酸素はフリーラジカルと呼ばれ、過酸化脂質を産生して細胞膜を傷害します。ビタミンEは酸化されやすく、活性酸素と結びついてフリーラジカルを除去するはたらきがあり、これを抗酸化作用といいます。

過酸化脂質が増えると、血液の粘稠度が上昇します。ビタミンEの抗酸化作用によって過酸化脂質が減少すると、血液の粘稠度も低下するので、血行をよくするとされ、内服薬以外に軟膏も市販されています。

【ビタミンK】

ビタミンKは、肝臓でプロトロンビンその他の血液凝固因子を活性化して血液凝固にはたらきます。血液凝固阻害薬のワルファリン(一般名:ワーファリン)は、ビタミンKを競合阻害して血液を固まりにくくします。他にもカルシウムの骨への沈着を促進し骨を丈夫にするはたらきもあります。ビタミンK欠乏症では出血傾向、血液凝固遅延、骨形成不全が起こります。

ビタミンKは緑黄色野菜などに含まれる他に、微生物によって産生されるので、発酵食品の納豆やチーズに多く含まれます。ヒトの体内でも腸内細菌で合成されます。前述のとおり、ビタミンKとワルファリンでは競合阻害が起こるため、ワルファリン内服中はビタミンKを多く含む納豆などの食品は摂取禁止とします。

ビタミンKは胆汁酸と混合されて小腸から吸収されて肝臓に運ばれます(図9)。閉塞性黄疸があると胆汁が小腸に流れないので、ビタミンK欠乏症になることがあります。

図9 ビタミンKの代謝
図9 ビタミンKの代謝の参照画像
表5 主な脂溶性ビタミンと特徴
表5 主な脂溶性ビタミンと特徴の参照画像

5) ミネラル

身体構成成分のうち、酸素、炭素、水素、窒素以外の元素の総称で、無機質ともいいます(表6)。

①電解質

ナトリウム、カリウム、クロール、カルシウム、リン、マグネシウムなどの電解質は生体に必須の元素です。身体構成成分で最も多いミネラルは、骨の成分であるカルシウムとリンです。体液に多いのはナトリウム、カリウム、クロールで、細胞内液にはカリウム、血漿などの細胞外液にはナトリウムとクロールが多く含まれます。

【ナトリウムとクロール】

輸液は静脈内に投与しますので、まず血漿のなかに混じります。血漿の主要電解質はナトリウムとクロールです。

血漿中のナトリウム濃度が高くなると、晶質浸透圧も高くなり水分が血管内に移動して、血管内水分量が増えて循環血液量が増えます。すると、血圧が上がり心臓への負荷も増えるので、高血圧の人は塩分(塩化ナトリウム)制限が必要です。

【カリウム】

腎不全になるとカリウムも排出できなくなります。血漿中のカリウム濃度が異常に高くなると、心停止をきたします。ゆえに、腎機能が不明の際の緊急輸液は、カリウムを含まない輸液が選択されます。

高濃度のカリウムが急速に血管内に入ると、心停止するリスクがあります。そのため、カリウムの注射液には急速静注をしないような工夫や注意書きがあります。カリウムとインスリンの注射の死亡事故は過去には多くありましたので、最も注意が必要な注射薬の一つです。

【カルシウム】

カルシウムが不足すると骨粗しょう症になります。カルシウムは神経や筋肉の興奮にはたらく電解質なので、低カルシウム血症ではテタニーという筋肉のけいれんが起こります。心筋にも異常が起こり、心電図ではQTが延長して不整脈の原因になります。

高度の高カルシウム血症では、意識障害になります。乳がん、肺がん、前立腺がんで骨転移をすると高カルシウム血症になることがあり、血中カルシウム濃度を下げるビスホスホネート製剤を使います。

血中のカルシウム濃度は、主に副甲状腺ホルモンで調節されています。

②必須微量元素

体内含有量が鉄より少ないもの、あるいは一日必要量が100mg以下の元素を必須微量元素といいます。

必須微量元素は、鉄、亜鉛、銅、マンガン、ヨウ素、セレン、クロム、モリブデンです。 鉄欠乏では、貧血になります。

亜鉛欠乏では、皮疹、創傷治癒遅延、味覚障害などが起こります。亜鉛は魚介類で摂取できます。

銅欠乏では、貧血、白血球減少などが起こります。亜鉛は銅と同じくタンパク質と結合して酵素としてはたらくので、亜鉛を多量に摂取すると競合して銅欠乏になることがあります。銅はココアで摂取できます。

セレン欠乏では、心筋症が起こることがあります。

表6 主なミネラル
表6 主なミネラルの参照画像
ALMovie「予防的スキンケアのポイント」