2023年9月公開
デンマークからEidemakら1が「慢性腎不全患者に対する日常的なエクササイズ(30分間の自転車漕ぎ等)が、腎機能を悪化させることなく運動耐容能やQOLを改善させる」という報告をしたのは1997年のことでした。その後、1999年にはDeligiannisら2は、血液透析患者に対し週3回の監視下運動トレーニングを行い、トレーニングが運動耐容能と心ポンプ機能を改善すると報告しました。欧米ではこのような報告が相次いでなされていたようですが、わが国では当時、「透析患者はもちろんのこと、腎不全患者には運動は推奨されない」というのが大方の認識でした。私は2000年ごろに、自転車エルゴメータを漕ぎながら透析を受けているアメリカの血液透析患者の動画を見て衝撃を受けたことをよく覚えています。私ども医療法人才全会(以下、才全会)では、2004年ごろから準備を進めて2008年に透析中の運動を開始し、コロナ禍による中断を余儀なくされながらも現在も継続中です。
ところが、それより早い1984年に、信楽園病院の平沢由平3,4先生が「透析患者の運動療法」について報告され、同名の著書を日本メディカルセンターから上梓されています。平沢先生は透析患者にメディカルチェックや運動負荷試験・運動処方を経てトレーニングを行い、今の我々と変わらない、むしろ我々よりも綿密なやり方で透析運動療法を行っておられました。我々はもっと早く平沢先生に続くべきでした。
2022年4月、平沢先生に遅れること約40年、「透析時運動指導等加算(表1)」5が保険収載され算定できるようになりました。このように、透析運動療法が広く周知され認識されるようになってきたことには、実に感慨深いものがあります。適切な運動は透析患者のみならず、誰にとっても身体によいものであろうと思います。ここで「透析患者の運動療法」について学ぶとき、透析に限らず「運動についての知識」を我々自身のものとしてとらえ直していきましょう。それが自分たちのパフォーマンス向上につながり、ひいては患者指導の役に立っていくと思われるからです。
「透析運動療法」の第一歩は相手を知ることです。相手とは「運動」と「透析患者」です。ただ、透析患者さんの「可能な限り良好な身体的・精神的・社会的状態」について包括的にとらえるとすれば、運動だけではなく、患者と家族への教育、栄養・食事指導・服薬指導・生活指導・精神的ケア・就業をはじめ、社会とのかかわりなど介入すべき点は多々あると思われます。しかし、ここでは主に「運動」にポイントを絞ってお伝えしていきたいと思います。また、多くのガイドラインや成書・論文で運動耐容能や身体機能の評価についてさまざまな方法を紹介していますが、ここでは運動療法導入の際にどうしたらいいのか、という点に焦点を絞ってお話ししていこうと思います。それでは、まず「運動」についてのお話から始めていきましょう。
文献5より引用
引用文献
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透析患者の運動療法
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