2023年9月公開
このように、ATPの加水分解の際に放出される自由エネルギーが筋収縮を駆動することが明らかになったわけですが、運動を続けるためにはATPの獲得が重要になります。ATPはどのようにして生成されるのでしょうか。材料は主に糖・脂肪酸と酸素です。グルコース(ブドウ糖)を例に挙げて説明しましょう。
1分子のグルコースが完全に酸化されると、約30分子のATPが生成されます1が、この過程は細胞質ゾルで起こる解糖と、ミトコンドリアで起こるTCAサイクル~酸化的リン酸化と呼ばれる一連の2つの反応に分けられます。解糖は酸素がなくても進み2分子のATPが得られますが、十分に酸素が供給されなければピルビン酸を経て乳酸が生成されてしまいます。一方、酸素の供給が必要十分量ならばピルビン酸はミトコンドリアに入り、TCAサイクル~酸化的リン酸化の過程でグルコースのもつエネルギーがすべて引き出されて、残りの大部分のATPと水・二酸化炭素が生成されます(図1)。
このように、ATP獲得のカギは酸素の確保ということになります。少し大袈裟に書くと図2のような感じになります。乳酸は電離して1価の酸となりますので、この酸を緩衝するために身体に代謝や呼吸による応答が生じます。
さて、私たちが運動を続けるためには、以下の2つのことが重要だと考えられます。
そのためには、以下の2つのことが必要です。
酸素は筋細胞内に拡散という方法で取り込まれるため、酸素輸送システムがよく機能することが重要です。酸素輸送システムに影響する要因は、呼吸器系・心血管系・赤血球の機能や血液・末梢組織の性状など多岐にわたります2ので、どこかに問題がないかどうか、あらかじめチェックすることも必要です。
また、酸素供給量に限度があれば、筋細胞のエネルギー消費もそれに見合ったものになります。無理をして筋細胞が酸素不足に陥れば、乳酸が生成されて運動の継続が困難になるからです。乳酸が急激に生成されないギリギリレベルの運動強度は嫌気性代謝閾値(anaerobic threshold:AT)と呼ばれ、乳酸閾値(lactate threshold:LT)に相当します。
引用文献
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