Part2運動の基礎知識

医療法人才全会 伊都クリニック 副院長
九州体力医学研究所 所長
松嶋 肖子

2023年9月公開

1.「運動」とは筋肉の収縮の繰り返し

身体を支えている骨は関節で連結され、それらは筋肉が収縮することによって動きます。筋肉はどのように収縮するのでしょうか。

骨格筋細胞の電子顕微鏡写真などでわかるように、筋細胞内には多数の筋原線維が平行に並んでおり、明るい部分と暗い部分の規則的な横縞模様になっています。明るい部分(明帯)はアクチンフィラメント、暗い部分(暗帯)はミオシンフィラメントで構成され、明帯の中央にZ盤という暗い線があり、筋原線維1本のZ盤から隣のZ盤まではサルコメアと呼ばれます。骨格筋細胞は、長さ2.2μm程度のサルコメアが延々と反復する構造をしています1。サルコメアが収縮する際には、アクチンフィラメントとミオシンフィラメントは互いに長さを変えずに滑り合って重なり合います(図11

次に、サルコメアの収縮はどうやって駆動されるのか、という点について考えてみましょう。ミオシンフィラメントには頭部があり、頭部がアクチンフィラメントに付いたり離れたりすることが筋収縮の原動力となります。通常、ミオシン頭部はアクチンフィラメントに結合してしっかり固定されています。そこに1分子のATP(アデノシン三リン酸)が結合すると、ミオシン頭部はアクチンから離れ、アクチンフィラメントに沿って約5mm移動します。ATPはただちに加水分解してADP(アデノシン二リン酸)とPi(無機リン酸)が生じ、Piが離れるとミオシン頭部は再びアクチンフィラメントの新しい部位に強く結合し、その際に「強く漕ぐ動き」、つまり形態変化による力の発生が起こります。アクチンにはミオシン頭部の進行方向とは逆向きの力がかかり、結果的にアクチンフィラメントを動かすことができるのです。ミオシン頭部はアクチンフィラメントの異なる部位に結合して最初の立体構造に戻り、1サイクルが終わります。ミオシン頭部がアクチンフィラメントに結合している時間は1サイクルの5%に過ぎないため、多数のミオシンが一緒に動いて1本のアクチンフィラメントを動かすことができるということになります1

図1サルコメアの収縮の模式図
図1 サルコメアの収縮の模式図

アクチン・ミオシンはそれぞれの長さを変えずに互いに滑りあって収縮する

引用文献

  1. 1.Alberts B, Johnson A, Lewis J, et al:Molecular biology of the cell. 5th ed., Garland Science, 2008:1392. (中村桂子,松原謙一監訳:細胞の分子生物学 第5版.ニュートンプレス,東京,2010:1429.)
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