2023年9月公開
冒頭でご紹介した信楽園病院の平沢由平先生ですが、著書を書かれた1984年の数年前から透析運動療法に取り組んでおられたということです。実は1980年ごろ、糖や脂質などの代謝改善や貧血・血圧・抑うつ・不安などの改善を目的とした運動療法が盛んになり、透析患者についての報告も世界では散見されておりました。平沢先生もレポートで触れておられましたが、それらの先行研究に触発された面もあるようです。世界で透析運動療法が次に脚光を浴びるのは(テーマは少し違いますが)1990年代半ば、わが国では2010年前後のことになります。抗重力筋のところで述べた、ベッドレスト運動の研究も1990年代に盛んでしたが、それも過去に遡れば1968年に有名な実験が行われ、大きな反響があったようです。
これらに鑑みると何やら波のようなもの、言い方は悪いですが「流行り、すたり」のようなものが感じられてしまいます。実際には、波が静かな間にもどこかで誰かが続けていて、細い糸をつなぐようにがんばっておられるのだと思います。今は診療報酬もつき、患者にも周知されて、運動を希望する方もおられるということから、皆さんの関心はとても高いことでしょう。もし運動療法を導入して一段落しても、患者が飽きてドロップアウトしそうになっても、万一診療報酬がなくなるような事態になっても、どうかその細い糸を離さず、次につなげる手になってください。透析患者が自分に合った運動を自らの意志で学び実践する、医療者はそれを適切にサポートできる、そんな日常が訪れることを心から願っています。
Part7透析患者の運動療法の実際②off-HDエクササイズ(透析時以外の運動療法)