1.最期まで尊厳を保つケア:生活を整えるケア
金井一薫氏は、ナイチンゲールが『看護覚え書』に記述した“看護の定義”を書籍化し、看護や介護に従事する人に向けて、現在の日本社会がめざすべきケアとは何かを明らかにしました。
金井氏は、ナイチンゲールが『看護覚え書』の中で強調したことを次のように述べています。「看護(ケア)の実践を行うにあたっては、“生命の法則”・“自然の法則”を重視して、根拠に基づく行為をしなければならない(中略)実践看護を行う際にしても、行為の裏付けとなる“からだのしくみ”を理解し、観察と技(art and science)によって適切な方法を駆使していかなければならないと考えたのです。」1。
生活を整えるケアとは、単に規則正しく食事を準備し、おむつを交換し、清潔にするという技術的な行為だけではありません。『看護覚え書』では、生物としての人間とはどのような存在なのかを明らかにし、生物に共通するいのちのしくみと、かけがえのない固有の存在としての人間の尊厳にかかわるケアの在り方を看護・介護に示唆してくれています。
ここでは、金井氏が「ナイチンゲール看護論」において明らかにした看護の定義に基づき、終末期にある人が最期まで尊厳の保たれた生活を送れるように行う、食事、排泄、睡眠の3つのケアについて解説します。
1.食べることへのケア
食欲低下は多くの人が生きる希望を失い、自分のいのちの限界を感じやすくなる出来事です。低栄養はいのちの存続につながります。
比較的様態が安定している時期は、